2009年 12月 21日
パブロと犬 |
昨日までの寒さがぐっと和らいで、今日はずいぶんと暖かくなった。
マイナス10℃前後の日がしばらく続いた後で、また0℃前後に戻るのがベルリンの冬なのだそうだ。
一番寒い時に博物館に行ったので、博物館から博物館を歩くことがとてもつらかった。耳がしびれるし、つま先はかじかむし鼻水はたらたらと垂れ続ける。
この時期来たのは間違いだったかなとちょっと思ってしまった。でも、いろいろ面倒なことを片付けて検討した結果この季節になったのだから仕方あるまい。
平均気温は1℃前後だというから、それほど毎日寒くなることもないだろう。
ただ自転車はやはり買わないで正解だったかもしれない。路面が凍結するし、雪は残ってるしもうとにかく自転車で走るには最悪のコンディションである。
最初のころはシングルスピードのクールな自転車でベルリンの街を疾走しようなんて考えていたのだけれど、そんな甘い考えで走れるようなもんじゃないなと思った。
時折、街でメッセンジャーたちを見かけるけれど、彼らのプロ根性には感服してしまう。マイナス10℃の凍結した地面と空気の中、ましてや敷石がやたらとスリッピーな状態でロードバイクをとばすなんてのは至難の業だ。
今日も相変わらず怠惰な一日を送ってしまっていた。
ローゼンターラーの角のケバブ屋で昼飯にケバブを食べるのが、ここ三日間日課のようになっているのだけれど、今日もいつものように食べて来た。
ドイツに多くのトルコ移民がいてくれて本当に良かったと思う。ドイツ料理は基本的にあまり美味くない。もちろんきちんとしたレストランに行って食べたことがないから何とも言えないけれど、ソーセージ以外はあんまり美味くない。
ドイツでもケバブ屋は人気のようで、そこにはわりと客足が途絶えなかった。
秋葉原のケバブ屋のことをちょっと思い出す。
ローゼンターラーの角のケバブ ひとつ食うとお腹いっぱいになる
これで2,5ユーロ(約325円)安い!!
相変わらず自炊作戦は続いていて、昨日はタイ米をつかって混ぜご飯を作ってみた。
炊飯器は前の人が使っていたものがあったのだけれど、他人が使った炊飯器ってなんか抵抗があるので鍋で代用。
コンソメを溶いてそこに人参を細切れにして投入。さらにアスパラガスを輪切りにして入れてチョリソーも輪切りにして入れてしまう。
もうとにかくなんでも一緒に炊き込んじまえという無差別級どうだまいったか料理だ。
こういう料理ならもともと一人暮らしでさんざんやってきていたのでわりと適当にやる時はやるのである。このコンソメ炊き込みがわりと美味くできたので、しばらくはこいつにバリエーションをつけつつあれこれとやって行くことになりそうだ。
ケバブ屋で満足した後は文房具屋に寄ってクリスマスカードを買った。
もう間に合わないとは思うけれど、出発前にお世話になった人に送ろうと思ったのである。おしゃれなカードはどれもわりと高かったけれど、それでもなるべく手頃なものを選んだ。
周りの人たちへの恩義を忘れないように、というのは行きつけの店のマスターから学んだことである。こういう教えは言われて覚えるものではない。感じるものだ。
コンソメ炊き込みライス
その後、帰ろうと思って地下鉄の構内に降りた時に僕は一人のギター弾きと出会った。
ベルリンにはストリートミュージシャンが多い。
日本みたいに若い人が大勢でやっていたりするのと違って、本当に街のあっちこっちにいるのだ。どこかに固まっているということもなく、徒党を組むこともなくみんなみんな一人でやっている。
一番驚いたのは例のマイナス10℃の夜に寒風吹きすさぶ橋の上でアコーディオンを弾いていたおばちゃん。おばちゃん死ぬよ!?と思ったのだけれど、ねじが2,3本外れているのかまったくかまわずに弾き続けていた。
体の作りが違うとかそういう次元じゃないと思うんだけどなあ。
彼はスパニッシュギターをなぜかピックで弾いていたのでなんとなく気になって見ていた。
演奏が終わると僕は拍手をした。「巧いね、とてもきれいなサウンドだ」
実際彼の演奏は巧かった。派手さはないが基本を押さえたシンプルで正直なプレイだった。あまり弾きまくるタイプではないんだろう。ギターがひょっとして本業でないのかもしれない。
その彼と意気投合して一杯ビールでもおごるよと誘った。彼はわりと二枚目なのだけれど妙に人懐っこいところがあった。僕が英語で話しかけると堰を切ったようにあれこれと話し始めた。
スペイン人の彼は僕と同じようにずいぶん前に勤めていた仕事を辞め、ヨーロッパ諸国をあっちこっち渡り歩いていたらしい。大道芸人でもあるという彼はギターもそうとう巧かった。
卓越してとまでは行かないのだが、それでも十分巧い。二人で店で飲んでいたら店にいた客の一人から声をかけられた。僕たち二人が二人ともギターケースを持っていたので話しかけて来たらしい。
演奏を聴きたいのかそれとも自分が弾きたいのか、ただ単に音楽つながりで絡みたいだけなのか。たぶん全部だったんだろう。
こういう場で日本人のくせにブルースを演奏するのもなんなんだが、日本のトラディショナルったって『荒城の月』ぐらいしか思い浮かばない。「荒城の月」ではなあ....。
僕が「Sweet Home Chicago」を歌い、彼は彼でスパニッシュをプレイしてみせた。
声をかけて来た二人はスパニッシュギターが好きらしく、ちょっと教えてくれよと言って、ちょっとしたギター講習会みたいになってしまった。
店の人がいつもはやさしい年配の人なのだが今日は若い娘さんが店番をしていて「ぼはー」とタバコの煙を吐いている、僕らがやっているとだんだん彼女の目が三角になって来た。
とうとう途中でもうちょっと静かにと言われて僕も彼もなんだかやりづらくなってしまった。
当の話しかけて来た二人はそれでも始終ご機嫌でリズムを取っていた。何となく二人で苦笑する。
「どこかお店でプレイできればねえ」と彼は言った。
なんとなく境遇は似ているようだ。もちろん彼の方が筋金入りの本物なんだけど。
「YouTubeに動画があるから見てくれよ」とのことだったのでリンクを貼っておく。
Circo Teatro Los Sonambulos
ありがとうパブロ。またどっかで会おう。
たぶんまあすぐに会うことになりそうな気がするけれど。
soundscape
by itr-y
| 2009-12-21 05:41
| ベルリン