2009年 12月 23日
そのスピードで |
朝なるべく早くに起きて軽く朝食をとり、昨日書いたクリスマスカードに封をして郵便局まで行く。
今日は写真家の友人が知り合いの画家の絵の運搬を手伝ってくれないかということで、昼に待ち合わせをしていたので、その道すがら郵便局に寄った。
写真家の彼からときどき低学歴や、水準の低い人間は英語がしゃべれないという話を聞いていたのだけれど、ここの郵便局のおばちゃんも英語がしゃべれなかった。
いろんなレベルの人がいて、例えば楽器屋に行ってけっこうチーフっぽいおじさんでもあまりしゃべれなかったりする。
一番ひどかったのは僕が英語で話しかけるや否や、ぷいときびすを返して若い店員にひとこと「英語だ」と言ってあごで僕をさした時だ。
いい人ももちろんたくさんいるのだが、こういう態度を露骨に出すやつは本当にもう態度が悪いので、お手上げ状態である。
しゃべれる人も本当にもうある程度という人が多い。
こっちもある程度ではあるけれど、こっちの方が英語には慣れているのでちょっと口語的な熟語を使うと会話が成り立たなくなるので、こっちまで単語だけのアホみたいな言葉でしゃべらざるを得なくなる。
いよいよドイツ語習うしかないな。
本当はおしゃれな切手とか貼って、いかにも外国からのお便りという感じにして送りたかったのだけれど、おばちゃんとの深いコミュニケーションを断念した僕はそれをあきらめた。
おしゃれな封筒に無惨にも書留郵便風の紙が貼付けられた。封筒3通で5.10ユーロ。高いのか安いのかよくわからない、それなりに高いような気もするが、まさか高いので送ってないだろな。次回からはハガキにしよう。
(ドイツ鯉。こいつのウロコだけは苦手である)
友人宅に着いたものの、まだ時間的に1時間くらい余裕があったので、近くのカフェで待つことにした。カフェに入る前にちょっとしたアーケード型の小奇麗なマーケットがあったのでちょっとだけのぞいてみる。
以前にマウアーパークのフリーマーケットで古いリールを見つけてから、ドイツの釣りに関して調べていたのだけれど、マーケットの中に魚屋があったのでちょっとのぞいてみた。
一番驚いたのが淡水魚と海水魚が一緒に並べられていたことだ。
ドイツ鯉とニジマスと鯛が一緒に氷の中に埋まっている。泥臭くならないのか非常に心配である。
ドイツも一応北の方は海に面しているので、海の魚もそっちからやってくるのだろう。渓流釣りができる山岳部のきれいな川もあるらしいが、そこは国土のうちとても限られたエリアらしい。
あとは平地だから、必然淡水魚。しかも鯉科の魚がほとんどとなるらしい。
鯉科の魚で売り物になるものと言えば、そりゃもう鯉ぐらいしかないわけだし、ドイツだから全部ウロコのでかいドイツ鯉になるわけである。
あとはニジマス。なんとなく目が小さくて泥臭そうなニジマスばかりである。たぶん平野部の生け簀で養殖されているんだろう。頭が丸くてあごがあまり発達してない様子を見ると、ペレット(配合エサ)で育てられているっぽい。
基本的にあまり食欲の起きない魚屋である。
(鯛とクロダイとエボダイを足したような、頭の丸い鯛)
(アメマス、というよりドリーバーデンに近い これは唯一おいしそうだった たぶん近海物)
(ニジマス なんとなく人工的 色がどす黒いところを見るとおそらく池育ち)
魚屋で時間をつぶしカフェで書き物をしていたらいつの間にか時間になったので、彼の家に行った。
レンタカー屋でトラックを借りて、そいつで運ぶそうである。ドイツに来て驚いたのが働く車にベンツが多いということだ。工事用の特殊車両までベンツなのである。今日借りたトラックもベンツだった。
ドイツではほとんどの車はマニュアル車である。オートマというのが一般的なのは日本とアメリカぐらいなものらしい。彼がほとんどペーパードライバーということで僕はちょっと緊張していた。
「生きて帰って来れる保証はないから」と言った彼の顔はすでにこわばっていた。
どうもマジで言っているようだ。
エンジンをかけるとカーラジオからマイケルジャクソンの「ビリー・ジーン」が流れて来た。
そろそろとベンツのトラックが動きだし、僕は神に祈った。
彼の運転は無免許運転のそれに近いものだった。発進の時にエンストはもちろん、空ぶかし、急発進、車間距離、ライン取り、などなど、すべてにおいて危なっかしく口では「大丈夫大丈夫、落ち着いて」というものの僕はいつの間にか足に力を入れて踏ん張っていた。
彼の運転は妙に右に寄るクセがあった。ドイツでは右側通行なので右に駐車車両があるのだけれど、そこに果てしなく近づいて行く。
まるでスターウォーズよろしくぎりぎりをあり得ない早さで突っ切って行くので、僕はハラハラしていた。
あまりにも右に寄るので、「右近いよ、もっと離れた方がいい」と口にした矢先、僕の目の前のミラーが駐車車両のミラーを吹っ飛ばした。
「....やっちった」
車が止まる前に誰かが走りよって来た。
他人に因縁を付けるスピードは早いんだな、と僕は関心した。それだけそのまま走り去って行く輩が多いんだろう。彼が車から降りて行くと、車のオーナーらしき女性が近づいて来た。僕は車の中に残っていたのだが彼が降りると旦那らしき男が勝手にドアを開けて逃げないようにキーを抜こうとした。
キーは彼が抜いて持って行っていたのでそこにはなかった。
「そういう行動は早いんだな」
僕は車の中でもういちどつぶやいた。
警察が来るまでけっこう時間がかかった。僕は道幅の狭くなった道を交通整理しながら、彼と被害者の夫婦の話が終わるのを待った。
警察はなかなか来ない。
「こういう行動はトロいんだな」
交通整理をしながら僕はまた一人でつぶやいた。
soundscape
by itr-y
| 2009-12-23 04:28
| ベルリン