2009年 12月 27日
マウアーパークの平和な一日 |
フリーマーケットに出店する人々にとってその日がいい天気であるかどうかはかなり重要な問題だ。
雨の日は客が来ないばかりか店を出すのも一苦労だし、寒い日はみんなポケットから手を出さないから、必然財布の紐もかたくなる。
先週がちょうどそんな感じで本当に凍てつくような寒さだった。それでもきちんと店を出すのだからすごい。みんなフリマは楽しみにしているのだ。
だから今週はみんな胸を撫で下ろしていたことだろう。一時、寒波のように冷え来んだものの再び暖かくなって少し積もった雪もとけていた。
いつもどおり寝すぎた休日、ふらふらと起き上がって日曜日なのを思い出しマウアーパークへと向かう。歩いて行ける距離に比較的大きなフリマがあるというのはけっこういい。
かっこうの暇つぶしになる。観光モードから一市民モードにチェンジしつつある僕はなるべく無駄遣いしないように気をつけていた。でも今日はいくつか自分のために無駄遣いをした。
いつも同じ場所に店を開くトルコ人の店があるのだけれど、そこで先週から気になっていたあるものを購入した。
DAM Quick社製のオールドスピニングリールである。
古いリールが三つくらい、お互いに糸も巻き付いたままでそのままになっていたのが先週から気になっていて、悩んだ末に買うことにした。
旅先であんまりがらくたを増やしたくないというのがいつも頭の中にあったので、こうしたものを買うのにも慎重になってしまっていたけれど、自分にご褒美とOLみたいなことをぬかして買った。
DAM Quickは旧西ドイツのメーカーで、アブやミッチェルなどに次ぐリールメーカーである。今でも確か作っていたはずだ。
とまあ、そういううんちくを一週間かけて調べて、とりあえず間違いないよなということを確かめてから購入したわけである。
こういう行動はなぜかとても慎重である。
「発言には根拠を持って」といつも無責任な発言ばかり言う昔の上司がそう言っていたので、とりあえず買う根拠を探していたのだ。
フリマで買い物するのに根拠なんかいらないわけだけど。
いくら?と聞くと「一個7ユーロ。二つで10」と返って来た。いくら10ユーロでも二つはいらねえなと思った、というのも一緒にあったやつはほとんどが日本製の古いプラスチック製のリールでとてもじゃないけどわざわざドイツに来て買うようなもんでもなかったからである。
ドイツで釣りをしている人はあまり見かけない。
日本ならどれだけオフシーズンでも誰かしら竿を出していたりするもんだけれど、それほど釣り人の姿は見かけない。
ひとつには都心部だからということもあるんだろうけれど、ドイツの釣り事情というものが関係しているらしいのだ。
ドイツでは釣りをするためには免許がいる。そしてそれは金で買うものではなく、筆記試験だとかもある試験をパスして幾ばくかを納めて初めて釣りができるのだそうだ。
筆記試験て...。
たまに見かける釣りのおっさんがとても頭良さそうに思えて来た。
他にもいろいろと制約は多いらしく、ドイツで釣りをすることはわりと大変なのだそうだ。日本でやったら釣り人の暴動が起きそうだ。
要はあんまりポピュラーではないようだ。
やっぱりヨーロッパで釣りって行ったらイギリスなのかなあ。
7ユーロ(およそ910円)で購入したおんぼろリールは、さすがにドイツ製らしく重厚な威厳を持っていて、非常に所有欲を満たしてくれるものだった。
難点はベイルが戻らないことと、ストッパーが外れていてハンドルが回せないことだったけれど、もとから修理は必要だろうと思っていたのでまあよしとした。
これで難癖を付けて「これじゃ使えねえからもっとまけろ」と言えば3くらいにはなったかもしれないけれど、たかが910円で買ったものをわざわざ戻って行って難癖を付けるというのもバカバカしかったのでやめた。
そういうのは買う時に言うべきだ。
でも返ってから古い糸を取り払ってベールのスプリングを調整しているとなんとも言えない至福の感覚があった。
古いリールだ。
とてもシンプルにできている。この時代のDAM Quickは現代のリールと比べても十分に使えるものらしい。実際に使っている人も多いそうだ。難点は重いことらしいが、まあこんなものを使っている時点でその人はたぶん重さなんてどうでもいいんだろうなと思う。メーター級のシーバスとやり合ってもたぶんびくともしないだろう。
実戦で使用するにはたぶんもちょっとリペアが必要だろうな。
鈍く光るエンブレムを眺めつつ、一人で悦に入りながらしばらくカフェでいじくり回していた。
soundscape
by itr-y
| 2009-12-27 09:12
| ベルリン