2010年 01月 21日
遊歩道 |
先日、ベルリン案内人のM君から電話があって一緒にカリーラストを食いに行った。
ベルリンでファーストフードというとケバブ以外ではこのカリーラストがメジャーで、たいていどこの軽食屋でも売っている。輪切りにして焼いたソーセージの上にケチャップとカレー粉がかかっている。そして横には付け合わせのポテト。
ケバブといいこのカリーラストといい、どっちもドイツ料理じゃないじゃんと最初のうちは思った。でも基本的にドイツの食文化は貧相である。
生鮮食品が良いものとしてよろこんで食べられる食文化の日本人にとっては、すべてが缶詰と瓶詰めと加工肉のこの国の料理はどうしても貧しく見えてしまう。ソーセージとパンとコーヒーはどれもとても美味しいのだが、こうしたところに息苦しさを感じてしまう。
でもその店のカリーラストはなかなかであった。
軽食屋というよりカフェっぽい店内で僕らはビールを飲みつつ、ソーセージをつまんだ。自称「カリーラスト研究家」のM君は食べる前にパシャリと写真を撮っていた。
食い物の写真を一人でいる時に撮るのは気恥ずかしいものがある。誰かといればいいけれど。とか言いつつけっこう撮ったけど。
「こんなものばっか食ってっから肉がつくんだよね」
とM君は言った。
この間、彼の家でご飯をごちそうになったときも、「以前よりも飯が食えなくなった」という話をしていた。25も過ぎれば体もあっちこっち変わってくるものだろうけれど、それまで若者であった人間がそうした現象に出会うとちょっとショックを受ける。
そうか年を取るってこういうことなのか。それが実際の感覚となって現れてくる。
僕の場合、まず最初に変わったのが足の臭いだった。25を過ぎたあたりで一時、足の裏がひび割れたようになったことがあって、とてもかゆくなった。最初水虫かなにかかなと疑ってみたんだけれど、皮膚科に行ってみてもらってもカンジダぐらいしか見つからなくて特に異常はなかった。
それ以降皮膚のほうは治ったんだけれど、足がやたらと酸っぱい汗を凝縮したような臭いを放つようになってしまった。幸いこっちに来てからは寒くてあまり足裏に汗をかかないせいかそれほど臭いはない。でも習慣として帰ってからとりあえず足を洗うようになった。
気がついたら自分の父親とまったく同じことをしていたのでなんだかおかしかった。半分同じ遺伝子なんだから仕方あるまい。
後は胃袋が小さくなったということで、これは彼と意見が一致した。昔はわりとガッツリ食えてたのが、最近では突然おなかが一杯になってしまってまったく受け付けなくなるということが多くなった。
ちょっと食べただけでもおなかがいっぱいになるので不安になってしまうくらいである。肉体労働をほとんどしていないせいもあろうが、たぶん昔の半分以下になってしまったんじゃないだろうか。それでも贅肉はたしかに付きやすくなっていると思う。
思い起こせばこのブログも初めて5年近くが経とうとしている。昔は片道1時間半かけて真夏の都内までは知って通勤してみたりとか、朝夕毎日意味もなく走ってみたりとかしていたのだけれど、あの頃のハングリーさはまったくどこかに消えてしまいつつある。
いかんな。
こっちに来てまさか自転車に乗れないとは思わなかったので、なるべく意味もなく歩き回るようにしている。きのうも少し遠くまで散歩がてら足を伸ばしてきた。
ベルリンの街を把握するには、とりあえずテレビ塔のある繁華街アレキサンダープラッツと、そこからブランデンブルグ門、戦勝記念塔まで東西に伸びる大通りとの位置関係を見れば、おおよその場所が把握できる。
最初ここに来た時にいいところだと言われてもわからなかったのだけれど、僕のアパートが中心街に歩いて行ける距離であると同時に閑静な住宅街であることがここに来てみてわかった。
今日は自宅から西に歩き、首相府があるハプトバーンホーフを通り過ぎ、ジーゲスゾイレ(戦勝記念塔)を通り過ぎて動物園のある公園を歩いてまわった。動物園に着く頃にはもう遅くなってしまっていて、すでに真っ暗だった。雪のつもった運河脇の遊歩道をひとりで歩いた。
薄く凍った氷面に今日降った雪が薄く積もっている。
ふと視線を感じたので左側を見てみると、おりの中からリャマがこっちを見ていた。
「あリャマ」
一人で歩いているとどうでもいい独り言が多くなる。
彼らは基本防寒着を来ているから外でもオッケーみたいだ。君たちの毛でできたスリッパ高かったぜ。一足40ユーロってありえねえ。あったかいけど。
寒い日だった。途中でカフェに寄って一息ついてから帰る。
また少し寒くなるのかもしれないな。部屋に帰ってから、お湯で洗ってほんのり暖まった足をマッサージしつつそんなことを考えた。
soundscape
by itr-y
| 2010-01-21 17:28
| ベルリン