2010年 02月 25日
Lovers in Japan |
帰りの機内はたぶん考えうる限り、最悪のシートポジションだった。
僕は内側の4席のうち左から二番目という場所にいて、日本に着くまでの10時間を狭い座席でもぞもぞしながらひたすら耐えていた。
両隣には日本人が座っていて、二人とも男だった。そして二人とも神経質だった。少し足や腕が触れるとピクッと反応する。そして、尻が痛くなって座席の上で体勢を変えようとするとこっちをじろっと見る。そしてすぐに目をそらす。
日本人だ。
長い間ドイツ人とベルリンの街への不満ばかりを言っていたような気がするが、気がついたら同じ国の人間が嫌になっていた。まあまずドイツの人なら些細なことは気にしない。もちろん気にする時だってあるが日本人ほど神経質ではないと思う。僕らの繊細さのベースにはそうした他人への不満と自己中心性があると思う。
他人に求めるものが多い故に自分を律する。他人に嫌悪感を抱くことが多い故に礼儀正しく振る舞う。他人と自分を比べてそれよりも勝っていると優越感を抱き、劣っていると劣等感を抱く。
歪んだ自尊心が生む高性能で高品質で神経質な製品。
なんとも皮肉な話だけれど、そうした表裏一体の短所と長所に僕は気づいてしまった。なんてこった。外国でしばらく暮らして気づいたことは外国の人間とは一緒に暮らせないということ。そして、世界は決してひとつにはならないということ。でもそれはどこかでひとつであると言うことだ。
世界中の人がみな旅人になればいい。そうすれば戦争もなくなるだろう。
そんな話をドイツ人の友人としていた。もちろんそんなに簡単にいくはずがないと思うけど、そう言うことが必要だと思う。ジョンが目指した世界は案外そんなところにあるんじゃないだろうか。
そんなことを考えたりもしつつ、帰ってからというもの僕は雑務に忙殺されていた。免許の更新から確定申告、倉庫の整理などなど。帰ってきてからなにかと忙しかった。とりあえず今日で一段落つくのだけれど、これからやらなければならないこともたくさんある。
なかでも一番頭を抱えているのが市民税の納付のことだ。
今までは一応会社員だったので毎月給料から天引きだったのだけれど、今回から自分で納期ごとに振り込まなければならなくなった。そしてその額が10万近くになってしまって、正直払えない状況になってしまっている。
もちろん払おうと思えば出せない額ではないし、多少の還付はあるのだけれどそれを差し引いてもかなりの額だ。ほぼ半年分くらいがまとまって請求となっていてとてもじゃないけど払えない。仕事を辞めたと言っているのに、そんなことはおかまい無しに請求は来るのである。とんだお役所仕事だ。なおかつそれで分割払いにするとなると利息がつくわけで、もうどんだけ自分中心なんだよと本気で腹を立てていた。
いろんなことをやってみると世の中の仕組みというものがよくわかる。
この数ヶ月の間にも、今まで知らなかった常識をたくさん学んだ。こういう効用もあるのだ。税金のことだって漫然と過ごしていたらたぶん意識することってなかったと思う。多くの勤め人がそうだろう。しかしまあ今回の納税問題については参った。こんな出費はまったく予期していなかったのである。
迂闊だった。
これも勉強。
確定申告は直接市役所に行ってやってもらった。税理士さんが書き方を教えてくれるのである。国民健康保険だとか生命保険だとか、控除できそうなものはすべて持ってゆきなんとか2万弱は帰ってくることとなった。
ついでに税理士さんに市民税のことに関して質問してみた。やはり払えない人というのはたくさんいるそうで、税理士さんのところのお客さんにも分割払いで月1000円くらいしか払ってない人もいるそうだ。なるほどそんなもんなのか。
ただ個人的には「利息」というものが大嫌いなので、一括ですむものなら一括で払いたいのだけれど今回ばかりは背に腹は代えられない。さあて支払いプランを練りますか。市民税課で書いてもらった納付プランとにらめっこしている。
はじめて実感する税金の高さ。
それに見合うサービスを果たして僕は享受できるのだろうか。
ピーターパンは帰ってきたら飛べなくなって魔法も使えなくなっていた。そして現実的な問題に直面し、空を飛んで遊んでいた間にも自分が年を取っていることに気づいた。
でもなんだろう。
なんか楽しいな。
soundscape
by itr-y
| 2010-02-25 17:56
| 日常