2010年 02月 28日
西新宿カメラサミット |
帰国してからしばらくぶりに会った放浪写真家Kともう一人のカメラマンの友人Yくん。そしてその彼女さんでこれまたカメラマンの人と4人で新宿で会った。ベルリン在住のMくんといい、ケルンを案内してくれたSさんといい、僕の身の回りにはなぜかカメラマンが多い。
しばらくは都内に滞在しているのでどちらかというと浦安よりも新宿の方がアクセスがいい。住むところが変わると意外なメリットもあるのだ。都内でゆっくり飲むなんてまあまず浦安に住んでたら無理だ。
二人には渡さなければならないお土産がふたつあった。
もちろんカメラだ。
マウアーパークのフリーマーケットには、たいていいつも店を出しているトルコ人の店があって、そこで中古の古いカメラを安売りしているのだ。カメラは買って動かなかったりすると嫌なので買わない方針であったのだけれど、なんだかいくつか欲しくなってしまいそのカメラの写真を撮って、帰ってからインターネットであれこれと調べて、その翌週、再びフリマに行って現物をシャッターだのフォーカスだのあちこちチェックしてからようやく購入を決めた。
ひとつ目はPlaktica Super TLという、東ドイツ製の一眼レフ。
プラクチカはあんまり知られていないメーカーだけれども、実は一眼レフの歴史の中でもなかなか重要なメーカーらしい。なかでもペンタコンというレンズに関してはかのカール・ツァイスの血を引く由緒正しいレンズらしく、淡くやさしいボケ味の絵が撮れる。
実際に何度も何度もシャッターをテストしてみて、間違いなく機能するであろうということを確認してから、交渉に入った。最初は55くらいで言っていた相手に40ユーロと言ってみたのだけれど、それでは売れないという。負けて負けて45ユーロでどうだと言ってくる。こちらも負けずにダメだ、そんな値段じゃ買えないと食い下がる。
カメラ屋もその一線をもう決めてしまったらしく、それ以上下げようとしてもがんとして受け入れない。
だから僕は攻め方を変えて
「コイツを45で売るというのならレンズもう一個つけろ」
と、さっきカメラ屋に勧められて試した
ヤシカのレンズを指差した。
カメラ屋は不意に別方向から攻められてちょっと戸惑ったようだった。「う〜ん...」としばらく唸ってからトルコ人は首を縦に振った。
勝った。
....ような気がする。
まあでもSuper TLはいいカメラで、自分で試し撮りをしてみたのだけれどなかなかいい感じに撮れていた。そのうちフィルムスキャナが使えるようになったらここにもアップしようと思う。
調べていたらエキサイトブロガーでプラクチカの記事を書いている人がいたので参考までにリンクを貼っておく。
Xylocopal's Photolog
寒い国から来たプラクチカ
もうひとつは蛇腹。
完全なるアンティークカメラだ。
コイツは動くかどうかが一番不安だった。ジャンク屋の店先で入念に何度も何度もチェックをして、カメラとしての機能をきちんと維持されているかを何回も確かめた。モデル名は Agfa Standard 。なんと1928年のモデルである。Agfaはカメラ好きならけっこう知っている人も多いのだろうけれど、僕はこのメーカーのことをまったく知らなかった。ただ、こいつの額に輝くAgfaのロゴに惹かれて買っただけの話である。
シャッターも下りるし、絞りも効く。シャッタースピードだってこんな原始的な構造なのにきちんと機能していた。問題はと言えば、フォーカスが無限大のままに固定されていて、近くにピントを合わせられないことだった。
遠くの風景だけを撮るのに使うにはともかく、これはひょっとしたら修理が必要になるかもしれない。そう思いつつもなんとなく面構えに惹かれてこれも購入してしまった。最後の日に友人を招いてパーティーをした際、Mくんに一言、「君に『無駄遣いの帝王』の称号をあげるよ」と言われてしまったのだが、自分の今の預金残高を見るにつけ、もうまちがいなく「無駄遣いでした!!」と土下座したくなるような代物だったと思う。
だから彼らにはこのふたつを思う存分使いこなしていただかないといけない。
Agfaはフリマの客にはけっこう人気らしく、わりと手に取って見ている人が多かった。僕は前の人がそいつを元に戻すまでちょっとやきもきしていたのだけれど、無事に売り場に戻されてからすかさず手に取って交渉に入った。
トルコ人は最初60ユーロだなどとふざけたことを言ったので、ふざけんなのポーズをとると、50ユーロと言った。
「だめだ。35だ」
こっちも負けてない。
「わかったじゃあ45」
「ありえない」
最終的に値段は40まで下がり、やつはこれで交渉成立と言わんばかりに手をかざしハイタッチしようとしてきた。僕はそこで手は出さずにすかさず
「38」
と言ってみた。
やつの顔が微妙な感じにねじれて、それから「まーいっか、2ユーロくらい」という顔になった。
交渉成立。その時のレートだと1ユーロ127円くらいだったような気がするから、だいたい4800から5000くらいだろうか。動くかどうかもわからないジャンクに払うにはいささかリスクが高すぎるが、彼らも商売である。まあ後の代金は寄付として考えるしかあるまい。
そんなこんなでふたつのカメラは僕の手元にやってきた。そしてふたつともすごく重い。これのおかげで帰りの荷物をそうとう減らすはめになった。
自分ならともかく、彼らならもっとうまくこのカメラを使いこなしてくれるだろうと思ったのだ。自分が欲しいと思っていた気持ちもなくはないが、どう考えても自分にはフィルムの写真を撮るだけの時間とお金がない。
フィルムはお金がかかるのだ。そしてカメラは僕にとって専門外である。
このお土産は二人とも、いや3人とも喜んでくれて、3人でよってたかっていじり倒していた。スタンディングのビールバーで飲んでいたのだけれど、隣にいた外人さんもカメラ好きらしく、一目でこれがプラクチカとアグファだと見抜いていた。
そして最終的には僕ら4人と外人2人の6人でそのカメラをいじり倒していた。
そして自分が購入した値段を言うと、「それはいい買い物をした!!」と言ってくれた。そういう風に言ってもらえると何ともすごく得した気分になれる。自分はいい買い物をしたのだと自信が持てた。
Mくんもぶつくさ言いながら僕の部屋に来た時にずっとこのカメラをいじり倒していたので、まあみんななんだかんだ言ってカメラが好きなんである。
喜んでくれておじさんはうれしいよ。
そしてピンぼけ野郎たちの夜は更けてゆくのだった。
参考リンク
camerapedia.org
soundscape
by itr-y
| 2010-02-28 01:19
| 日常