2010年 03月 01日
失われていたもの |
ひさしぶりにガッツリと自転車で走った。
ベルリンにいた時はまったく乗っていなかったので、体が少し戸惑っていた感もあったけれど、走っているうちに目が覚めてきたような感じがする。
昨日は東京マラソンだったらしいが、僕はもちろんそんな物とは無縁の一日を送っていた。豊洲のららぽーとでずっと懸案だったメガネを買ったのである。
自慢じゃないが視力はけっこういい方だと自分で思っていた。しかし、最近目の疲れを感じるようになり、とうとうメガネの購入に踏み切った。
年を取った。
そう感じた。
今までは少しぐらい見づらくても、気のせいだとか言ってごまかしていたのだが、以前に検査の結果、眼科の先生に近視と乱視が少し混じっていると言われたのだ。別の件で眼科にかかっていたのだけれど、データとしてつきつけられると認めざるを得ない。夜間の運転などではメガネが必要だと思いますね、と言われた。
目は良かったのである。昔から両眼とも1.5はあった。
高校の頃からじんわりと悪くなってきて、それから10年近く自分をだましてきたのである。メガネをかけると目が悪くなると信じていたのだ。じっさいそう言う物だと思う。でも乱視となると話は別だ。そもそもがピントを合わせづらい状態になっているのだ。それは疲れるに決まっている。この見えづらさが今まで精神的なストレスにもなっていたので、メガネをかけたのは正解だったと思う。
メガネを買った帰り道、メガネをかけた状態で街中を走ったのだけど、まあよく見えること見えること。看板の文字や、細かい注意書き。道行く人の表情。昔見ていた景色がようやく戻ったような気がした。
こんなにきれいな世界に住んでいたのか。
僕は一人で文明開化されていた。そしてしばらくぶりに見るクリアな世界に見とれていた。素直にうれしかった。そしてなんだか少し淋しくもあった。もう肉眼ではこの世界を見ることはできなくなっていたのだ。恐らくそうとう以前から。
事実を受け入れたほうが生きやすい。それはたぶんどんなことでもそうなんだろう。でもそうしたくはなかった。まだ受け入れなくちゃいけないことがたくさんある。そういうことにも気づかされる。メガネを買っただけでなんでこんなことを自分はずっと考えてるんだろう。考え過ぎだと思う。
でも世界は美しかった。
そのことだけで優しい気持ちになれた。
そして無性に誰かが恋しくなった。
ねえ、君は今どこにいる?
soundscape
by itr-y
| 2010-03-01 23:42
| 日常