2010年 08月 30日
退屈男の嗅覚 |
ベルリンの音楽事情はつまらない。
自分が体験した範疇でしか言えないのだけれど、なんだかどれもこれも似たような音楽ばかりだ。
来ておいてこんなことを言うのもなんだが、はっきり言って退屈である。
クラブでは聞き分けのつかない騒音のようなビートが延々と流れていて、音と光で冗長さをごまかしている。あるいはちょっとアーティストを気取った感じのミュージシャンがラップトップを前にして神妙な面持ちで一音二音ちょこちょこ音をいじくっていたりする。そしてそれをバックに生楽器が適当なソロを弾いたりするのだが、絶対にスケールアウトとかしない。ずっとスケールの範疇でパチンコ玉のように決まった音しか弾かない。
PCでシーケンスを流しながら、それをバックにただ意味のない音を垂れ流して深刻な顔をしているのだから、聞いている方もうんざりしてくる。みんな退屈じゃないのかなと思いつつ、たまにふとあたりを見回してみるのだけれど、やっぱりどこか退屈そうな顔をしている。
でもなんか我慢している。
なんでだ?
どうもPCを使ったエレクトロニカなサウンドの上で、生楽器だとか民族楽器を使ったりすると「前衛的だ」とみんな思ってしまうらしい。たぶん音楽そのものよりも形式の方が大事なんだろう。どうもそれをありがたがっているようだ。僕は今日もアホ臭くなって途中で会場を後にした。つき合ってられない。
でもまあ、そんな不思議意味不明サウンドもあれば、わりあい硬派な音楽もあるのがベルリンのいい所で、僕が気に入っているクラブのひとつはインプロヴィゼーション(即興演奏)が主体のクラブだった。そこではアマチュアのミュージシャン達が楽器を持ってきてみんなでジャムセッションをして踊りまくるという所なんだけれど、そこに集まるミュージシャンたちは、いわゆる「ミュージシャン」であった。プロ顔負けの演奏をする。たぶん中にはプロの人もいるんだろう。
キーをひとたび決めて誰かがメインになるフレーズを弾き出すと、他の楽器も加わり始めて底に次のアイディアを付け加え始める。そして歌だって入るのだけれど、これもまた即興だった。(たぶん)
そこは例外的にある意味音楽レベルの高いクラブだったのだけれど、ベルリンでもこういう所はなかなかまれである。唯一ここにはもう一度行ってみたいと思う。それ以外は、有名どころと言われるクラブも僕には今ひとつだった。というか、そもそもが人ごみが苦手で踊りもしない人間がクラブを楽しめるかと言ったら楽しいわけがないんである。自分の好きな場所に行くのが一番だろう。
しかし、退屈なクラブも考えようによっては参加しやすい取っ付きやすさもあるのかもしれない。おかげで僕も前回の滞在では庶民的なライブハウスでオープンマイクに参加させてもらったし、誰でも参加できるようだった。まさにピンからキリまでなのである。
楽しい場所を探すには嗅覚が必要だ。
結局それはどこでも同じみたいだ。
soundscape
by itr-y
| 2010-08-30 07:34
| ベルリン