2010年 10月 16日
住めば都 |
またとりあえずの部屋が見つかって、とりあえずひと月はいられることになった。
このままとりあえずの部屋を点々としながら、とりあえずの生活を続けて行くうちに、とりあえず一年が過ぎ、またとりあえず年をとりそうである。
ワーホリビザの期限は一年だし、これで3ヶ月が過ぎたらもう4分の1が経過したことになる。生活が落ち着いたら、とかなんとか言っているうちに帰る日が来てしまうんだろうな、と思うとなんともやりきれない。
そのかわり、どこに行ってもその部屋の環境にすぐ慣れてしまうようになって、今の部屋も外見は不気味だけど中に入れば非常に快適である。一人部屋というのはやっぱり性に合っているらしく、気兼ねなく生活をすることができている。小さいけれど部屋にテレビがあるというのも新鮮だった。地元の民放なんかを言葉の勉強代わりにつけっぱなしにしておくのもなかなかいい感じだ。ドラマとかでも言葉がわからなくてもだいたい大まかな筋はわかるのが面白い。なんにせよ、生命力が強くなっているのはいいことだと思う。
しばらく人のキッチンということもあって思う存分自炊をすることがなかなか叶わなかったのだけど、一人部屋になって気兼ねなくガッツリ自分の飯を作れるようになった。作ったキッチンをそのままにしておいて急いで出かけても大丈夫というのはいい。
一人の方が楽に暮らせている自分を見つけるにつけ、ちとウスラ寂しい気分にもなるのだが。
新しい部屋はまるで昭和末期に建てられた都営住宅のような物件で、おそらく築30年以上は経っている。しばらくイタリアに行くという部屋の持ち主から借りたものだ。ドイツの家はレンガと漆喰で作られた天井の高いドイツならではの伝統的アルトバウと、コンクリで作られた天井の低い現代的な建物ノイバウの2種類がある。
バウ(bau)というのはドイツ語で建築や建築物、建物を指し、アルト(alt)というのは古くからのとか、昔からのという意味がある。ノイ(neu)は英語で言うnewで、新しいという意味だ。ベルリンではアルトバウの方が多くて、一階から四階くらいまでは天井がやたらめったら高い。優に2メートル以上はある。日本の感覚すると考えられないくらい高い天井なのだが、この高い天井のおかげで狭くてもあまり狭いように感じないというメリットがある。問題があるとすれば電球を替えるのに毎回脚立を持ってこなければいけないことだろうか。
今回の家は初めてのノイバウで、最初は「げっ、ノイバウかよ」とか思っていたものの、住めば都。すぐに順応してしまった。アルトバウの家は一見するとすごく豪華に見えるのだけれど、あっちこっち基本的に古いのでジャンプすると床が揺れたりとか、一見ニス塗りで見栄えのいい床板がギシギシきしむなど、日本的には考えられないような住み難さも兼ね備えている。たとえばドアは分厚いようでいてけっこう薄い。そして下にすこし隙間があいていたりする。最初に来た時住んでいた部屋はドア下からスースーとすきま風が入ってきて寒かった。
高い部屋というものに住んだことが無いからよくわからないけれど、どこの部屋も一長一短で、何かしらどこかに欠点がある。その辺りはまあ日本とあんまり変わらないみたいだ。そう言えば昔、不動産屋に「自炊するんですか!?」と聞き返されたことがあったけれど、想定されていないことって部屋によって異なるもんである。
明日からまた本格的に部屋探しを再開することとなるが、つかの間でも「自分の」部屋があるというのはとても心強いものだ。
ちょっとがんばろう。ちょっとでいいから。
そんな風に思った一週間。
soundscape
by itr-y
| 2010-10-16 04:47
| ベルリン