2010年 11月 23日
煙る空 |
雨の日が続いている。
きれいにからりと晴れることもほとんどなくなって、僕は完全に夜の支配者となった。
夜の支配下に入ったというべきかもしれない。
明け方に寝るクセがついてしまい、起きたら2時だなんてのもざらになってきつつあり、頭も体も水風船みたいになって昼下がりに起きている。外はどんよりと曇っていて雨なのか曇りなのかはっきりしない天気が続いている。
ポタポタと雨の降るおかげで気温がそれほど下がらすにいるのかもしれない。手がかじかんでしまうような寒さはないけれど、地味に嫌な天気だ。自転車で走ると泥がついてしまうので面倒になり、走らなくなりつつある。寒い分にはまったくかまわないが、雨だけは厄介だ。ずぶぬれになる上に汚れるし、なによりも危険だ。そんなわけで最近はあまり乗らなくなってしまった。
金はないけれど時間はあるのをいいことに、部屋に引きこもってずっと本を読んだり、ギターを弾いたり、わりと悠々自適な時間を過ごしている。年金生活者の暮らしのようだ。そう言うことが出来てしまうのがベルリンのいい所でもある。
もともとそういう状態になるためにこの街に来た。自分の時間をぎりぎりまで使って何かを作ってみたかった。日本にいると何かと出費がかさむのでそう言うことはまず叶わない。贅沢な時間だと思う。でも一人であることに慣れているはずの自分に少しずつ変化が起きているのも感じている。
誰かに会いたいと強く思う。
普通の人間がヨーロッパの陰鬱とした冬に鬱病気味になってしまうというのもよくわかる。だが、それでも僕はたぶん相当に孤独に耐性のあるほうらしく、あいかわらず自分のペースを守って行動している。じいさんもそうだったけれどウチの家系はどうもそうらしい。つらいことがあっても、大変なことがあってもわりと飄々とマイペースに生きている。おそらくその遺伝子が僕らをずっと生かしてきたんだろう。今まで自分の欠点のように思っていたことだったけれど、ひょっとしたらすごいアドバンテージなのかもしれないなと思った。
音楽を作ると言っても、こっちにすべての機材を持ってくるわけにも行かないので、必然非常に限られたものだけで作らなくてはいけない。まだなにも作っていないのでなにも言えないが、ずっとギターばかり弾いていたおかげもあって、アイディアだけは山のようにありどれをどうしようか手のつけどころがわからないような状態だ。
今は引きこもった方がいい。
そう言えば今の今まで、文字通り部屋にこもったことなんてほとんどなかったなと思い出した。強迫観念のように外に出なきゃいけないと思っていた節もあったのだろう。わりとウロウロしていた感が強い。でも今は自分のことに集中するべきだ。そう思っている。
そう言った意味でネットのない部屋というのはとてもいいのかもしれない。
僕は自主的に自分の空間と時間をコントロールしなくてはいけなくなって、スケジュール帳やメモ帳とにらめっこすることも多くなった。紙に書けないものは出来ないのである。そして昨日の晩、自分がやりたいこと、そのために自分がやらなければならないことを書き出していってみた。書いてみたらとてもシンプルな二つの答えが残って、僕は昨日の晩ようやく自分の立ち位置をはっきりと認識した。
そう考えると人生における時間の配分というのはわりと公正なようにも思えた。
週明けの今日、片付けなければならないことがようやく片付きそうな兆しが見えてきた。いいことだと思う。この街ではひとつひとつのことにいちいち時間を取られる。とてもつまらないことだ。でもひとつひとつの物事をあるべき場所に戻していく作業が必要なのだ。
僕はまだ当分夜の支配下に置かれる。
soundscape
by itr-y
| 2010-11-23 00:29
| ベルリン