2011年 02月 22日
Process |
連日こちらでも中東地域で激化する民主化運動のニュースが報じられている。
発端はチュニジアで起きたデモだったが、もうすでに連鎖反応はペルシャ湾岸にまで広がりあちこちでデモが起きすでにいくつかの国では政権が転覆させられてしまった。Facebookを使ったネットワークが功を奏し、瞬く間に運動は各地へ飛び火した。中国でさえネットの規制を始めるなど、その動きは距離をものともしない。
もちろん、それがネットというもののスピードだからだろうけど、世間が民主化運動が広まっていいことだという論調になっている中、僕はちょっと冷ややかな目でこれを見ている。
最初にこれを知ったのは、まだエジプトにこの動きが広まる以前にネットのご意見番イラスト写真日誌のなおきん氏がこの動きは中東全域に広がって,やがては石油危機につながるだろうと予想していたのを読んだ時である。おそらくは多くの人の予想通り、この動きはあっという間に広がってイスラエルの孤立を招きつつある。なんともはや、すごいスピードだと思う。
まさか中国まで行くとは思ってなかったけれど、たぶんこの動きはもう止められないだろう。沈静化はすると思う。ただ流れとしてはこういう時代が来たのだ。
ただ個人的に何に問題を感じているかと言うと、民主化したところでいったい何がどう変わるというのかが疑問なのだ。民主化おおいに結構だ。独裁者がいなくなってみんな自由になる。フリーダム。ただ、これまでなぜ多くの国でいまだに独裁政権が幅を利かせていたのか。それが問題だと思う。独裁者が出来るまでにはそこに至る経緯がある。なにもみんな好き好んで支配されるわけではない。それ相応の事情があったからそういうことになっちゃってたし、それでかえって上手く行ってたんだろうと思う。もちろんたくさんの犠牲はあったし、たくさんの問題はあった。ただ今のイラクやアフガニスタンをみれば、アメリカによってなんちゃって民主政府を作ったはいいけれど、各地でのテロは止まらないし経済状態だって良くない。とくに何かが変わったわけではないのだ。
昔、歴史の授業で大化の改新を習った時に社会科の先生が「これは何が変わったかようでいて、特になにも変わってない。ただ支配者が変わっただけだ」と教わったことがある。今回の政変は僕にはぜんぶ大化の改新に見えている。
民主化するにあたって多くの人が意見を言える環境がネットによって作られたのは歓迎すべきことだと思う。多くの人々はこれまでよりも簡単に自分の意見を発信できるようになって、多くの人たちとつながれるようになった。これはなによりもネットの恩恵だと思う。しかし,これによって得られたのはただ単に時間を早送りする手段だけのような気がしてならない。
起こっているとは変わらない。
ただネットによって時間の大幅な短縮が起こった。
それだけだ。
本当に必要ならば人々は何百年かけてもつながることは出来る。僕が今住んでいるこのドイツだって最初は別の国だった。それがナポレオンのもたらした革命の空気と侵略の危機感によってドイツ国民をひとつの民族としてまとめあげた。どこからどこまでがつながるかはわからない。ただ、そのときの世界情勢によって国はくっついたりわかれたりする。スペインだって最初はアラゴンとカスティリヤだった。
革命が起きて政変が起きたからって景気が良くなるわけじゃない。お金はなにもない所には生まれない。ただ石油の値段が上下すれば食料事情も変わってくる。お金がないのならば相場を突っつく何かを起こしてその値段の上下から利益を生むしかない。株やFXと同じである。そしてそれを行えばいったい誰が儲かるかと言うとかの国に決まっている。たぶんそう言うことである。
日本だって民主化を与えられた国だが、経済的には他国と比べればまだ先進国だ。しかし先だって中国にGDPを抜かされたばかりである。もう経済だって多少回復するかもしれないけれどそれほどよくはならないだろう。
多くの国が今回の民主化革命によって民主化をもたらされるのは必至だろうと思う。ただ、その国の中のいったいいくつが経済的に自立し、民衆による真の意味での民主化を獲得するだろう。アメリカだって一見民主主義のように見えるが、その実ほとんどがコントロールされているし、日本も似たようなものである。民主化は一般家庭に例えれば娯楽費を増やすようなもので、経済的に余裕がなければ作り上げることが出来ない。民主主義を維持したまま国の規模を縮小することはもしかしたら可能かもしれないけれど、お金がない所には民主化は根付かない。水と日光と肥料がなければふつう芽は出ない。だからこそ日本をはじめ多くの国は今まで財政支援を多くの国に行って来た。でもそうそう簡単にはよくならない所がほとんどだ。まだまだ時間がかかる。
アニメ、新世紀エヴァンゲリオンの中でコンピューターウイルスの使徒(敵)が現れるストーリーがある。
ものすごい早さでコンピューターをハッキングし、様々な対抗手段に対して秒単位で進化して次々に汚染区域を拡大して行く。この敵に対してネルフは進化のスピードを逆に速めることで相手の自己自滅を促す作戦にでる、という話だ。進化の最終地点は自滅(アポトーシス)である。
DNAの中には生きるためのプログラムと自滅のためのプログラムがあって、僕らはそれに支配されている。そこから逃れられる人間、あるいは生物はこの世には存在しない。
僕は今回の民主化運動をそんな進化の過程の一場面としてしか見ていない。どれだけ多くの国が民主化を獲得できるかはわからないけど、できない国もたくさん出てくるだろうし、また形だけの民主化になってしまって形骸化してしまい元の木阿弥になってしまう国もあるだろう。でもそれはそれでいいのである。よくないかもしれない。でもそれでいいのである。
あなたがそこから利益を得たければ、彼の国や隣国のように混乱に乗じて利益を得ることも可能だろう。そんなことを人間はずっとやって来た。生物すべてが、と言ってもいいかもしれない。
何かが起こっているような気がする。たぶんもっと人死には出る。物価も上がるだろう。そしてしばらくしたらまた落ち着くだろう。
やがて僕らは静かにゆっくりといなくなる。
soundscape
by itr-y
| 2011-02-22 06:16
| ベルリン