2011年 09月 20日
空瓶と秋の月 |
この間の更新から気がつくとずいぶんと日が空いてしまった。
はやいものである。
ベルリンはあれからもずっと夏日というものはなく、幸か不幸か涼しい日々が続いていた。気がついたら立秋も近くなっている。
僕はと言えばあいかわらず代わり映えのしない日々を送っていた。多少なにか変わった事があったかと言えば、少し人と会うようになったという事ぐらいだろうか。何人かの知人を家に招き食事会を開いたり、女の子とデートしたりしていた。充実してると言えばしてるのだろうか。しかし、ドイツ語をやる気もあまり起こらず、グダグダになって来ているし、せっかくいい部屋に住んだのだから何か曲を作ろうとしても今ひとつやる気が起こらなかった。
今の家に不満な点が何かあるかと言えば、スーパーが今ひとつ遠い事である。そしてさらにはビン回収機のあるスーパーがひどく遠いことだろう。こっちではビールの方がどんな飲み物よりも安いのでついついビールを毎日飲む事になるのだけど、ビールは基本的に全部ビンで売られているので、そいつをえっほえっほと担いでこなければならない。そして飲み終わったなら空き瓶をえっほえっほと持っていかなければならないのである。これが面倒くさい。
またスーパーによっては瓶ビールを売ってるくせに、回収はペットボトルしか受け付けないというようなひどいスーパーもあって、我が家の近くにはそんな半端なスーパーしかないのだ。なんでも吸い込んでお金に換えてくれる優秀なビン回収機は、そうそうあちこちにあるわけではないのである。それに瓶一本で8セントである。別にいらないと言えばいらない金額だが、何本も飲むとそのまま捨てるのももったいないのである。6本持っていけば48セント(50円くらい)にはなるのだ。
まてよ、やっぱ少ないな。
それでもとりあえず瓶はすべて持ってゆくのである。なにがいいかって、そりゃビンがすべて片付くとすっきりするからである。
11月頃に日本に帰ろうと思っている。まだチケットは買っていないが、それぐらいがちょうどいいだろう。それまでに帰る準備をしなくてはならない。やるべき事は多い。全部は無理だろうから、必要な事だけをピックアップする必要がある。再び、ワーホリ前のようなドタバタ劇が始まろうとしつつある。
人と関わる必要がある。それもたくさんだ。それだけの人脈があるわけではないのだが、持てるものを総動員してやる必要のある計画もある。それがなんなのかを書かないのは、実現しない可能性の方が高いからだ。自分のやる事だからどうせダメに決まってる。どこかでそう思っている節がある。
でも同時に、それをすべて実現できたらそれはこの一年の滞在を無駄にせずにできたと思えるような事でもある。難しいけれど、実現が不可能ではない程度の企画。ここは自分らしく、それほど力まずに、じわりじわりと芋虫のようにやっていきたいと思うのだ。
この街では人とつながりたいと思えばつながるのはそう難しい事ではない。長い間、あこがれだった人でさえも、この街では会える可能性がある。それがいいところだ。同時に、ここでは自分の意志を持たない人間は腑抜けになりやすい。ひどく目的意識を欠いた人間が出来上がる。そしてそれはこの一年の自分だった。理由はわかっているしやむを得ないとは思うが、同時にそれを反省している。もっと何かやりようがあったかもしれない。あるいはそうするしか他になかったのかもしれない。どちらでもいいような気はする。
しかし、自分の部屋から見えるガソリンスタンドの明かりや、遠くで明るく浮かぶ月を見ていると、今の状態でも十分得たものはあったと少し誇らしく思えるのである。
いろんな人と関わって、いろんな事があった。まったく無駄じゃなかったよ。
斉藤和義の歌じゃないけれど、月に話しかける事だって気兼ねなくできるのである。そんなことはそうできたものではない。
soundscape
by itr-y
| 2011-09-20 23:00
| ベルリン