2011年 10月 22日
ワインベルグの週末 |
髪を切り、髭を剃る。ついでに鼻毛も切る。切った髪の毛を掃除するために掃除機をまわし始め、ついでにバスルームの雑巾がけもしてしまう。スパゲッティを茹で、実家から送られて来たインスタントのみそ汁の味噌を絡めて、トマトとネギの味噌風味パスタなるものを作って食べる。
ゴミをまとめていらない瓶もすべて中庭のゴミ箱に捨ててしまう。それから僕は少しギターを弾き、そして買い物に出かける。銀行に行き、つながらなかったネットバンキングの不具合を解消してもらい少しお金を下ろした。衣料品店に行って安売りされているジーンズを試着してみるが、明らかに安物買いになりそうなのでやめる。今日の失敗は今日が金曜日だということを忘れていたことであった。
きのう、楽器店で見つけていいなと思っていたAKAIのMIDIパッド付きキーボードは展示品価格で75ユーロだったのだけれど、明日は土曜日なので店が休みである。そうなると月曜日まで買えないことになる。滞在も残りわずかなのにそんなものいるのかどうかという問題もあるが、当人にとっては大事なことなのである。
結局、今日の口頭試験は棄権した。きのう、筆記とリスニングをやって打ちのめされ、どうやったって受かりっこないということがわかったからである。試験の後、さっそく僕は一人また大型書店に行き、熱が冷めないうちにと再びドイツ語の試験問題の問題集を購入した。次は絶対受かろう。そのための準備をしよう。受験費用もバカにならなかったけれど唯一試験を受けて良かったことはそれであった。今、これから僕は勉強を始めるのである。
試験前は忙しかった。
なんやかんやと試験とは関係のないイベントが次々に起こり、僕はそれに巻き込まれていってとてもじゃないけれど勉強できる状態ではなかった。勉強したからと言ってなにかが変わったかという気もしないではないが、でもまあ大変だった。話は先週の金曜日、ベルリン郊外のワイン畑に知り合いの人に誘われてサイクリングに行ったところから始まる。僕はそれから本当にドタバタしていた。いろんなことは同時に起こるものである。
こないだの咳の発作の件といい、自転車が壊れてしまったことといい、つまらないことで煩わされる、まったくもって落ち着かない10月であった。
でもしかしいいことはちゃんとあった。
水曜日、僕は人を空港まで見送りに行った。見送りは送る方も送られる方も淋しいものだけれど、それがひょっとしたら見送ることの良さなのかもしれない。ひさしぶりのテーゲル空港で僕らは朝食をとり、つまらないことで笑い合った。僕はその水曜日でようやく金曜日からの渦から解放されて、ゆっくりと時間をかけて水面に浮かび上がった。帰りの道で足がなぜかカタカタと震えていた。そんな状態で受ける試験がうまくいく訳がない。それでも翌日、僕はきちんと早起きをしてハッケシャーマルクトにある学校まで行き、試験を受けた。今日の口頭試験に関してはもはや行く気も起きないほど打ちのめされた試験だった。ドイツ語はやはり難しいのである。
まとめをするにはまだ早い。そう思う。でも明らかに先週から昨日までのピリオドはこの不思議な一年間にふさわしい出来事で溢れていた。まだまだやることはたくさんあって、僕はまだ忙しいままだけど、少し深呼吸をするぐらいの余裕はできた。もう冷たくなった風がしんと足下を冷やす。外のガソリンスタンドの光が窓の外を青く照らしている。
ベルリンはやがて冬を迎える。
ここを去る日。僕はたぶんいつもよりいろんなことに感謝をすると思う。
soundscape
by itr-y
| 2011-10-22 23:00
| ベルリン