2011年 11月 02日
二十四時間の休暇 |
ベルリン、テーゲル空港発の便に乗り遅れた僕はフライトを再予約し直し、その日の昼にロンドンヒースローに向かった。迂闊だった。ふつうに空港まで向かう時間配分を間違えて乗り遅れてしまったのである。なんてこった。自分の間抜けさがつくづく嫌になったが、幸い190ユーロで翌日の成田行きを押さえることが出来たのは幸運であった。
ドイツを出ないわけにはいかなかった。滞在許可がまさに1日その日までだったからである。危ないところだった。でも、出られなかったでなんとかするしかないのである。それならそれでなんとかしただろう。でもしかし最初のこの遅刻さえなければすべてが万事順調にいったのだし、反省すべき点はそこにつきた。油断していた。特に帰る間際はすこし気分が浮ついていたと思う。
しかしまあくよくよしていても仕方がないので、せっかくの24時間のトランジットの時間をロンドン観光に使おうと僕は入国審査カウンターに向かった。イギリスの入国審査は厳しい。いつまでの滞在か、その間どこに泊まるかとかそう言ったことをすべてあらかじめ申請しなければならない。僕はアジア系の顔立ちをしたイギリス訛のある女性審査官にあれこれ事情を説明し、なんとか24時間の滞在許可をもらうことが出来た。ドイツで何をしていたのかとか、その間の生活資金はどこで得ていたのかのかとか、それで本当に足りていたのかとか、あきらかにドイツでの規定の労働可能時間では足りないはずだと訝った審査官は両親の仕事まで訊いて来た。
とにかく僕がここで仕事を探す気はないのだということがわかって、特別に許可を下ろしてくれた。イギリスは好きだがこの入国審査がいつも面倒だ。下手すると強制送還なのだ。冷静に対応することだけで精一杯である。しかし、ロンドンでの移民の多さを見れば、もうこれ以上移民を増やすわけにはいかないのだろうなと実感できる。身から出た錆である。
ヒースローのバカでかい空港で、ホテルでもブッキングしようと思ったのだが、安いホテルでも130ポンド(約¥16,000)すると言われたので、あきらめてとりあえず街に出ることにした。どこかで適当な安宿を見つけるのが良さそうだ。ヒースローから地下鉄で数駅行って、手近なところで降り、パブでギネスのハーフパイントとチキンハンバーガーという少し遅めの昼食をとる。時間は昼下がりの2時ぐらい。この辺でのB&Bの一泊ってどのくらいするのとバーテンに訊くとカウンターにいた隣の客がだいたい40か45くらいだと教えてくれた。まあそれなら悪くない。
ロンドンの物価は高い。東京の値段とは比べ物にならないくらい高いので電車で移動するにしても、何をするにしても、いちいち日本円に換算しなくてはならない。以前に泊まった安宿は25ポンドだったから、それよりは高いがまあ良しとしよう。時間がない時に宿探しでうろつくのは時間と労力の無駄である。さっさとパブの隣の宿に行ってチェックインしたら70ポンドだと言われて、いきなり話が違うやんけと思ったけれど、130ポンドよりはマシかと思いさっさとチェックインしてしまうことにした。きれいな個室とシャワーとおまけにテレビが付いているのである。文句はいうまい。
とっとと宿決めをすませた僕は地下鉄の一日券を買ってロンドンの街に繰り出した。行き先は以前に行けなかったロンドン橋である。ウォータルーの駅まで地下鉄で行き、そこから水上バスに乗る。中国人観光客がデッキにたくさんいたのでしかたなくデッキの眺めをあきらめ、中からロンドンの街を眺めた。ロンドン橋で下船し近くから橋を眺めて実際に渡ってみた。近くでみるとすごい大きさだ。これを100年以上前に作ったイギリスはやはり当時、世界一の工業大国であったのだろう。ロンドン橋を渡ると目的をとりあえず果たしてしまったので、ちょっと途方に暮れてしまった。ほんじゃまあすこしあちこちフラフラするかと、夜の街をうろつく。バスに乗り、駅に行き、クリスピークリームドーナッツを食べる。日本じゃ行列のできる店だがロンドンでは比較的空いていたので、試しに食べてみた。こういうものが美味いだけで旅はグンと楽しくなる。
夜のトラファルガー広場、パディントン駅、食べるところを探していて最終的に郊外のアールズコートにたどり着いた。あまり大きくない街の方が美味しいお店や小さいパブは多い。インドカレーのお店でカレーを食べる。ロンドンで食うものに困ったら、まず移民街に行くべきだ。イギリスの微妙な料理を食べるよりは、インド人やバングラディッシュ人の作るカレーを食べたほうが幸せになれる。いつもハンバーガーとチップスでは腹がいっぱいになったような気にはならない。それからパブに行き。カスクエールを一杯と再びギネスを一杯。その日あったことや使用経費をメモにつけると、今日はもうこんなところだなと思った。
また来よう。
ベルリンよりも実はロンドンの方が僕はわりと好きなのである。
soundscape
by itr-y
| 2011-11-02 00:00
| ベルリン