2011年 11月 25日
空気 |
浦安の街は変わらない。
もちろん変わったこともたくさんあったけれど、先の地震を経てなお浦安はいまだに埋め立て地の風情をどこかに残していた。新しい橋もまもなく開通しそうだ。泥に埋まってしまったセブンイレブンは早くも復活し、明日には新装オープンするらしい。けっこう行っていたコンビニなのではやく開店してくれると非常に助かる。
写真家二人と浦安散歩をした。散歩と言ってもフリーカメラマンYの次の仕事のためのロケ地の下見だったのだが、3人でこうしてぶらつくのはひさしぶりだった。ひさしぶりだったにも関わらずそう感じないのは、僕らが用もなく無目的な散歩を何度もくり返して来ていたからだろう。温泉だとかスキーだとかお酒だとか、これと言って楽しいことを追うことにあまり興味のない僕らが集うと、たぶん世の中の人々にとっては理解しがたい、意味不明な彷徨が繰り広げられる。特に意味はない。ただ、思いつきであっちこっちをうろつく。酒も女も博打もやらない。あるのはカメラだけである。
結果的に非常に健全になっている。Yは結婚と奥さんの妊娠を機にタバコをやめ、放浪写真家Kの方もタバコをやめた。もちろん僕も吸ってない。図らずも僕らは小学校時代に戻ったようになった。
今、眠れないのでこれを書いている。気になるメールが来ていたからだ。風呂に入ってほんわかして来たから、その勢いを借りて寝てしまおう。夜型の生活を戻そうとしていたのに、やっぱり考えさせられてしまった。あらためて他人というのはどうにもならないと感じる。どこからどこまで干渉して、どこからどこまで距離を置けばいいのか。長い付き合いの彼らとの写真を見ながらそんなことを考える。僕らは付き合いは長いが、それほど頻繁に会うことはない。おたがい時間のある生活になればそれなりには会うがしょっちゅう顔を突き合わせたことはよく考えたらそんなに回数はなかったと思う。
夜、メールチェックなんてするもんじゃねえな。
ブツブツいいながら僕は起きて、冷蔵庫の中の妙な名前の発泡酒を手に取った。日本に帰って来てからそれほどビールというものを飲んでないのだけれど、あまり禁断症状というものも出ていない。たいしてアルコールに依存していたわけではなかった。そうわかってなんとなく拍子抜けした。とりあえずの仕事が決まって再来月くらいには収入が入りそうだ。喜ぶべきニュースなのにも関わらず僕は何となくぼんやりとしている。週末のテストに向けて机に向かったが、後半で集中力がつきて来る。あきらめて近所のコンビニに行き、なぜかビッグチョコモナカを食い、マウントレーニアのカフェラテを買った。
行動に一貫性がなくなるのはそわそわしている証拠だ。学力うんぬん以前に僕の場合はこの集中力と忍耐力のなさが非常に問題があると思う。現代の小学生みたいだ。もう30だと言うのに。
最初の渡独の際に買ったドイツ軍の払い下げのネイビーの厚手のコートがだんだんと体になじんで来た。家ではいつも父親と母親がテレビを見ているが、テレビを見るのがあまりにもひさしぶりなのと、地震と原発ショック以降、報道の内容が信じられなくなって来ているので、ことある度に眉をひそめてしまう。視聴者を誘導する微妙な言い回しが多い。人気のない歌手をさも人気があるように見せかける。面白くもないネタを延々と引っ張る。僕は早々夕飯を済ませ、食器を洗い部屋に引っ込んだ。
毎日が楽しくないわけではない。あいかわらずギターを弾いたりいじったり、次なるDIYのネタを考えたりするのは楽しい。これが商売にならないかなあなんて考えるのは面白い。直しても直しても自転車の前輪がパンクするのでうんざりする。5カ所くらい連続で立て続けにパンクするのでチューブがぼろぼろになってしまい、次のに付け替えたらそいつが翌朝またパンクしている。いい加減うんざりしたけれど、てばやくタイヤを外し、もういちど穴の空いた箇所を補修してはめ直す。出かけて帰って来て、しばらくしたらまた空気が抜けている。ひさしぶりによくあるパンク地獄にはまっている。
自分の頭みたいだなと、入れても入れてもシュウシュウとチューブから空気が抜ける様を見てげんなりした。
あんまり触らねえ方が調子いいんだと、いつだか航空整備の人が言っていたのを思い出した。下手にいじらない方がいいというのは、別にこの国の話だけじゃあるまい。メールには当たり障りのない返事だけしておいた。
触れるまいよ。
soundscape
by itr-y
| 2011-11-25 03:12
| 日常