2012年 10月 14日
up to you |
今年の3月頃、ベルリンから遊びに来ていたベトナム人の友人が再び日本に遊びに来た。今度は彼女を連れて二人で。彼の方としては彼女を案内してあげるという目的もあったのかもしれない。最初、六本木で待ち合わせたものの、相手が携帯を持っていなかったこともあり、結局行き違いで会えなかった。なので翌日あらためて会うことにしたのだが、どこに行きたいか訊くと、「どこでもいいよ」と一番聞きたくない答えが返って来た。
「It's up to you(まかせるよ)」なんて言われても困るのだ。第一、予算はどのくらいなのか、時間はどのくらいまでなのか。伝統的なものをみたいのか、最新のものを見たいのか。自然を楽しみたいのか、買い物を楽しみたいのか。どこでもいいよと言って散歩に連れ回したら、取り返しがつかないくらい不機嫌になっていったこないだのドイツ人の女の子の件を思い出して僕は少々げんなりした。まあしかし天気もいいし、ふと見上げるとスカイツリーが目に入って来た。たしかもう予約もいらないはずだ。こないだはまだ建設中だったし、自分もまだ行ってないから行ってみようとスカイツリーを目指した。
人形町の彼らのホテルからは押上のスカイツリーはそう遠くない。地下鉄を乗り継いで歩いてゆくと人がぞろぞろと同じ方向に向かって歩いてゆく。すごい人出だ。そう言えば連休だったと、その時になって気づく。行ってみると巨大なタワーの根元はショッピングモールになっていて、多くの人でにぎわっている。この人達はいったい何をやっているんだろうと思っていたのだが、やがてその理由がわかった。当日入場は、あらかじめ整理券を渡されて、その時刻になると戻ってゆきチケットが買えるという仕組みになっていた。待つ時間がこれで短縮されるわけだ。しかし、ついたのは11時だったのだがチケットが買えるのは15時半からで、入場が可能になるのは16時半くらいからだった。それまで何をするかと言うと、みんなそこのショッピングモールで買い物をするという事なのである。
モールの中にはすさまじい数のテナントが入っていて、すごい数の人々がひしめき合っていた。僕は瞬間的に「出たい」という衝動に駆られ、早く出ようと彼らに合図した。
こんな混んでる所よりも下町を散歩する方がよっぽど楽しい。そう思って彼らを連れ出したのだが、30分もすると、彼女のほうの雰囲気が怪しくなって来た。「ごめん、なんか彼女ショッピングしたいみたいなんだ。この辺でそういう買い物が出来る場所ってあるかな」彼の方がそう切り出し、僕はげんなりした。早く言ってくれればいいのに。オレに任せるんじゃなかったのか。こういう事があるから案内は疲れるのだ。
結局、僕らは抜け出したショッピングモールに戻り、彼女の買い物に付き合わされた。そして、しばらく買い物してから、そこのスタバで一休みした。そこでようやくなんとか入場まで時間がつぶせそうだった。僕はスタバにいる間、日本と言う国のなりたちだとか、東京という街の歴史を簡単に彼らに教えた。意外にも女の子の方はその歴史に少し興味を示したらしく、時折ふんふんとうなづいてみせた。時間になったのでまた列に並び、そこでまた1時間ほど。ようやくエレベーターに案内されたのは午後4時を回った頃だった。5つあるエレベーターはすべて内装が異なるデザインだそうで、やたらと華美な装飾が施されていた。
エレベーターは確かに速かった。
あっという間に東京タワーのてっぺん近い高さまで駆け上がり、東京タワーよりも桁違いに広い展望台に出た。大勢の人達で展望台はにぎわっている。記念写真を撮るサービスや、案内板。江戸の歴史などが描かれたパネルが並んでいた。特に展望台にいられる時間に制限はないようで、意外にもみんなゆっくりと景色を楽しんでいた。僕としては、期待したほどすさまじく高い高さではなかったのだけど、上から見てみるとふだん自転車で走る時に頭の中で思い描いているマップとまったくおなじだったり、違っている所もあってなかなか興味深かった。夕方には多少ガスがかかり始めていたけれど、天気がよくて良かったと思った。
その後、僕は彼らを連れて隅田川の水上バスに連れてゆき、それとゆりかもめを使ってお台場まで行った。ちょうど良いタイミングだったと思う。もう暗くなっていた東京の街は、ライトアップされた橋を次々にくぐり抜け、日の出桟橋についた。僕らはお台場で食事をし、そこで今日のツアーは終了となった。まあ、悪くはないコースだったんじゃないだろうか。僕は彼からベルリン土産のStabiloのペンセットをもらった。彼らが来る前にリクエストしていたものだった。僕はホテルまで彼らを送ると、自転車に乗って帰宅した。帰ると携帯に「今日はありがとう」とメールが入っていた。
いえいえこちらこそ。
そんな秋の日の休日。
by itr-y
| 2012-10-14 22:38
| 日常