2006年 10月 29日
Calling Card |
ロリー・ギャラガーを最近また聴き返している。
ワイルドかつ繊細。
カリッとしたギターが暗闇の中に傷跡を残しては消えてゆく。
安っぽい音色。
しかしそれ故にブルージー。
第二のクリームということで売り出されたTASTEは、クリームと同じスリーピースバンドだった。
「TASTE」というバンド名がもうすでに二番煎じなのだが、このバンドは本家クリーム同様あまり長続きせず、わずか数年ほどで解散となる。
クリームが解散した後、エリック・クラプトンの代わりに候補に挙がっていたロリーだったが、クリームの話は結局お流れになる。
その後も,ミック・テイラーが抜けた後のローリングストーンズの後任ギタリストとして名前が挙がっていたのもロリーだった。
なにかと「代役」というのが多い。
しかし、ミック・ジャガーは彼を本気でギタリストに迎え入れたかったらしい。
2、3日後に日本公演を控えていたロリーは、ミックから呼び出されロッテルダムのスタジオまで行ったのだそうだ。
しかし行ってみるとミックは「決定権はキースが持っているからあいつの意見を訊かなきゃならない」と言う。
そこでキースの部屋に行ってみるとキースは部屋で眠りこけている。
ロリーはしばらく待っていたらしいが、いつまでたっても起きないので「ジャパンツアーがあるので悪いけど帰ります」と書き置きを残してそのまま帰ったんだそうだ。
キング・オブ・ザ自堕落人間だった70年代のキース・リチャーズがそんなに簡単に起きる訳はないだろう。
ロリーはけっこう人脈が広く、ツェッペリン以前のジョン・ボーナムともセッションをしたことがあるそうだ。
他にもジェフベックやクラプトンなど、当時のイギリスのミュージシャン達とはけっこう交流があったらしい。
ソロになってからのロリーはその素質を全開に開花させることとなる。
ソロ第一作のアルバム「Rory Gallagher」はブルースロックチューンだけでなく、トラディショナルなアコースティックナンバーもあり、彼の引き出しの多さがうかがえる。
僕が初めて聴いたのはBBCセッションズだったのだが、そのスピード感とブルージィなギターに打ちのめされてしまった。
一切エフェクトをかけないプレーンなギターサウンドが、分厚いグルーヴを作り出し、それがものすごい勢いで脈打って行く。
僕はしばらくスピーカーの前で聴き入っていた。
愛用の61年製のボロボロのストラトから繰り出されるリフが、ガリっと空気を引き裂く。
このストラト、バスウッド製ということもあって基本的に音が軽い。
そのせいか音も若干チープである。
人によってはこの安い音が好きではないという人もいる。
でもこれがもし重厚でジミ・ヘンドリクスのような音だったとしたら、ロリーの持ち味である軽快なドライブ感は出なかったのではないかと僕は思う。
あまりギターソロ向きではない。
むしろこのギターだったからこそああいったスタイルが確立されたんだろう。
ひとつ欠点を挙げるなら、サウンドがあまり曲があまりポップでないことだろうか。
いくらロックとは言え、ある程度のキャッチーさは必要なのだが、ロリーの曲にはほとんどポップさはない。
ギタリストやブルースファンならいざ知らず、一般のリスナーにアピールできるような曲が少ないのだ。
いくら引き出しが多いと言ってもそれはブルースの世界においてなので、音楽に興味のない普通の人がぱっと聞いてわかるようなものではない。
どちらかと言うとミュージシャンズミュージシャンという感じなのだ。
もともとレコード会社の商業的な方針が嫌いで、よく喧嘩をしていたらしい。
真面目な性格ののロリーは売れ線の曲を書くことに嫌悪感を感じ、ある程度の距離を置いて彼らと接していたそうだ。
そのおかげでと言うかそのせいでというか、彼の音は独自のスタイルを貫き続けることになる。
しかし彼の音がマンネリかというとそうでもないのだ。
マンネリと言えばマンネリなんだが、でもなんだかそう言うことがはばかられる。
同じなんだがバリエーションに富んでいるのである。
なんだか変な言い方だ。
スタープレイヤーにもなれる素質を持っていたのにも関わらず、クラプトンのように商業的な成功を納めることのなかったロリーだけれど、そんな硬派なスタイルには大勢のファンがいる。
生前のジョンレノンやクラプトン。ヴァン・モリソン、ジミー・ペイジ、ブライアン・メイ、U2のエッジや、スミスのジョニー・マー、スラッシュ、オアシスのノエル・ギャラガーなどもそうだ。
95年に肝臓の移植手術の合併症の為にロリーは死んだ。
47才だった。
時代が変わっても頑固に自分のスタイルを守り続け、ひたすら自分自身のブルースを唄い続けた。
ギターがどうのとかそんなことではない。
そんな生き様に僕は憧憬を感じてしまうのである。
by itr-y
| 2006-10-29 19:16
| 音楽