2006年 11月 10日
贖罪の夜 |
昨日の夜は悶えた。
トイレの中でクの字に折れ曲がり、額に脂汗を浮かべ、壁に扉に頭をもたれかけていた。
上から下からの攻撃は続き、トイレの中で声にならない悲鳴を上げ続け、自分の運命を呪った。
僕はもともと胃腸がすごく弱い。
だもんで、何か飲みすぎたり食べ過ぎたりすると体が強制射出モードに入るのである。
小さい頃はそんな事まったくなかったのだが、17、8ぐらいになった頃からそんな体質になってきた。
はじめてなった時は多分オレはもうここで死ぬんだろうなと思った。
そんな大げさなと思うかもしれないが、本当にそう思ったのだ。
今まで自分がやってきた事のすべてが否定されているような感覚だった。
自分の存在も何もかも否定されて、人格を粉々に破壊され、嘲笑われながら腹の中に鉄の棒をギリギリとねじ込まれていた。
音楽なんてもうどうでも良かった。
勉強もどうでも良かった。
友人とのふれあいも、家族の絆も全部まやかしだった。
自分が愛した人もたんなる間に合わせだった。
つまり全部「無かった」んだ。
何もかもが偽物で、退屈な人生を紛らわす為の遊びに過ぎないという事実がねじりこまれるような痛みとともに波のように押し寄せてきた。
馬鹿馬鹿しい。
何もかも馬鹿馬鹿しい。
そんな思いが頭の中をよぎった。
単なる下痢で何を大げさなと思う人もいるかもしれないが、本人としては毎回毎回こんな感じである。
もうなんだか自分自身のレゾンデートル(存在理由)までドチャリと下腹部から引きずり出されるような感じだ。
尊厳も何もあったもんではない。
こういう気分はひょっとしたら体の丈夫な人にはわからないのかもしれない。
僕は毎回毎回この腹痛に苦しんでいるのだけれど、いまだにこの感触には慣れる事は出来ない。
ただでさえ投げやりでやる気のない無気力な自分が、さらに生きる事に対して無気力になっていく。
世の中の物事のすべてがどうでもよくなってくる。
すべての事に対して皮肉っぽくなる。
もう自分で自分に手を付けられない。
「だってそうだろ?」
右手に鉄の棒を持った自分が呟く。
僕は彼の前に跪く。
by itr-y
| 2006-11-10 18:25
| 日常