2006年 12月 29日
白身魚とカバの味 |
今日、新聞を読んでいて少し気になる記事があった。
ナイルパーチの話だ。
ナイルパーチはスズキ目アカメ科の魚で、アフリカ熱帯域の河川や湖沼に生息する大型に肉食魚で、成魚になると全長が2メートルにもなる。
食用としてファーストフードや、レストランなどで使われる。
マックのフィレオフィッシュとかと同様で、基本的に「白身魚」としてしか書かれず、原産地や魚種は表示されない。
ただ単に
「白身魚」
だ。
このナイルパーチ、身が大きく、加工もしやすく、味もいいのでいろんな所で使われているらしい。
別に美味けりゃなんでもいいけれど、基本的にあんまり表にナイルパーチとでかでかと表示するような事はないようだ。
まあ確かに名前はあんまり美味そうじゃない。
でも国産のスズキに比べて価格が安いので、日本でもけっこう需要はあるのだそうだ。
このナイルパーチ、ケニアやタンザニア、ウガンダなどから輸入されているそうだ。
なかでもビクトリア湖ではナイルパーチの出荷量が多く、住民の多くがその漁で生計を立てているのだそうだ。
しかしこのナイルパーチ、とても繁殖力が強く、それまであったビクトリア湖の固有種を食べてしまい、生態系をほとんど破壊してしまったのだそうだ。
なんだかどこかで聞いた事のあるような話だ。
ナイルパーチは環境省の要注意外来生物リストにも載せられており、国際自然保護連合(IUCN)の世界の侵略的外来種ワースト100にも指定されている。
このナイルパーチの話とは反対にカバが激減しているという記事があった。
コンゴ東部のビルンガ国立公園で、カバの生息数が乱獲によって減っているのだそうである。
カバなんかとってどうするのかと思ったのだけれど、なんと食用にするんだそうである。
かつては三万頭が住んでいた最大の生息地だったのが、今では600頭あまりになってしまったのだそうだ。
パンダとかトラとかゾウとか、わりとメジャーな動物が実はものすごく少ないという話はよく聞くけれども、生息数が600頭というのはちょっとひどい。
小規模な学校の全校生徒みたいな数だ。
90年代以降の難民流入によりコンゴでは食糧難が続いているそうで、武装した民兵が手当り次第に野生動物を獲るのだそうだ。
カバなんて見た感じとても美味そうだけれど、実際美味いらしくて、国立公園の監視員でもカバの肉を食べた事があるのだそうだ。
薄給で未払いの多い政府軍の兵士が、制服や弾薬を持って来てカバの肉を買ってゆく事もあるらしい。
何ともはや、貧困の罠そのものといった感じの話である。
コンゴなんてビクトリア湖から近いんだからナイルパーチ食えよと思うのだけれどどうなんだろうか。
カバは食われたらなんて言うんだろう。
「そんな餌で釣られ......カバーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
なんて言うんだろうか。
ナイルパーチの話にしてもカバの話にしても、みんな結局悪いのは人間である。
ビクトリア湖の魚を食い尽くして生態系の破壊したのはナイルパーチではなく人間だ。
よく日本でもブラックバスの話があるけれど、あれも悪いのはバスではなく人間である。
生態系を破壊しているのは人間なのである。
それをなぜかあたかも魚を悪役に仕立て、諸悪の根源であるかのように言うのかと言うと、その原因が人間であると言うと、言った瞬間から誰かに責任を取らせなくてはならないからだ。
だいたい、誰が最初にやったのかわからないような事件の場合、振り上げた手の下ろしどころがないので適当な代替物に責任をなすりつけようとする。
魚は文句を言わないからだ。
人間が悪い事になると、人間にとってはいろいろと不都合だから。
アフリカの貧困の問題はとても根深く、およそ人類が抱えている問題のほとんどすべてが含まれていると言っていいだろうと思う。
政治や経済、民族の問題が複雑に絡み合う中で、生態系を保護しろというのは到底無理な話なのかもしれない。
このままで行くと、カバや魚どころではなく、そのうち人間も死に絶えるだろう。
でもまあ生物ってそんなものだ。
結局どうなるかというと、金のあるやつだけが生き残る。
生き残った貧乏人をこき使い、彼らの生き血をすすっていく。
それはもうすでに野生動物だけではなく、僕らを含めた生態系なのだ。
彼らを死ぬまでこき使い、生き血をすすり、魚を、カバを食べているのは僕らである。
「食べてないよ」なんて言ったって無駄である。
僕もあなたも「アフリカ」を食べて生きている。
そしてそれはとても自然な事。
善いとか悪いとかそんな次元ではなく、もっと根源的な事だ。
強いやつが生き残る。
アフリカが死ぬのは可愛そうだが、僕は特に助けようとは思わない。
死んでゆくのが彼らの運命。
僕には彼らを助ける力なんてない。
彼らを食わせるだけの余裕なんてない。
僕はスーパーに買い物に行く。
魚の切身を買うだろう。
誰が獲って来たかなんどうでもいい。
どうでもいい。
LIVE INFORMATION
1/5(Fri)
下北沢ARTIST http://www.c-artist.com/index.html
CHARGE ¥1500 wih one drink
OPEN 19:00
START 19:30
by itr-y
| 2006-12-29 19:49
| 日常