2007年 03月 29日
ピストルピスト |
写真のこの自転車。
普通の自転車とちょっと違うところがあるのだけれど、お気づきだろうか。
そう。
ブレーキがついていないのである。
ブレーキだけじゃなくて他にもいろいろついていないんだけれど、まあとりあえず大きなところとしてはブレーキの有無だろう。
ブレーキがないのならどうやってとまるのかと思うかもしれないが、これは後輪のギアがペダルの直結していて、車輪がまわってるとペダルもまわり続けるのである。
だから停まるときはペダルに逆回転の力を与えながら少しずつ停まることになる。
あるいは靴の底をタイヤに押し付けたりして停まる。
でもこのバイクの場合ドラムブレーキのようなものがついているので、ひょっとしたらこれを使うのかもしれない。
まあどっちにしてもちょいと無理がある。
このへんてこな自転車はピストと言って、競輪に使われる自転車のように一番速く一番重いギアが一枚だけついている。
変速機なんていうものは無し。
ギアはこれだけだ。
見ているだけで膝をおかしくしそうな代物である。
このピストが最近日本でも流行りはじめていて、街中でもけっこう走っているらしいのだけれど、じっさいに本物を見るのはこれで二度目ぐらいだった。
新しいエクストリーム系のスポーツとして流行しているのだそうである。
何かの雑誌で読んだ。
読みながらやれやれと思った。
行くところまで行ってようやく健全になったようだけれど、こんなものはとてもじゃないが素人には乗りこなせない。
事故の元になるだろ。普通に考えて。
まあそれはそれとして、確かにこのピストというのはカッコいい。
余計なものが一切省かれているので、自転車のフォルムが綺麗だし何より修理が簡単だ。
もともと90年代にニューヨークのメッセンジャー達の間で流行りはじめたのが最初なのだそうで、それ故に修理のしやすさというのもひとつの大きなファクターになっているようだ。
それに加え何よりも乗りこなすのが難しいので、乗っている事自体がステータスになるのだそうだ。
そういうのって流行りやすいよな。
このバイクはわりあいクラシカルなテイストにまとめてあって、たたずまいも何となく品がある。
いたずらにスポーツっぽくするよりも、こういう地味なカスタムの方が僕は好きだ。
これは市販品ではないと思う。
上手い人はこれでウィリーをしてみせたり、ハンドルの上に乗ったり、果てはくるりと片輪でターンしてみせたりしてみせる。
たぶん普通の自転車乗りの感覚とは根本的に違うのだろう。
BMXと同じ感覚でピストを操る。
これも見ているだけで膝がおかしくなりそうだ。
こんなピストバイクの映画があるらしい。
PEDALというこの映画は、ニューヨークで働くメッセンジャーた愛知の間でのピストのムーブメントを追ったものなのだけれど、予告編を見る限りけっこう面白そうである。
このクセのある自転車を過激に乗りこなす姿は、とてもクールでカッコいい。
エクストリーム系のスポーツに憧れつつも、そんなに本格的にははまらなかった僕は、この映像を見てワクワクしてしまった。
あぶねえ。
でも面白そうだ。
この写真を撮った後、ふともう一回見てみるとピストはそこにはなかった。
ひょっとしたら写真を撮っているのを持ち主は後ろから見ていたのかもしれない。
参ったなあ。
僕は自転車の鍵を外して、低いギアに入れておいたペダルに足をのせて神保町の街に滑りだした。
soundscape
by itr-y
| 2007-03-29 20:16
| 自転車