2007年 05月 01日
一匹の稚アユ |
五月に入ってもうそろそろシーズンも終わりに近くなってきてると思うのだけれども、見明川河口付近の伝平橋の辺りでは、まだ何人かの人が稚アユ釣りをしていた。
毎年春になると多摩川や江戸川、旧江戸川にはアユが遡上してくる。
孵化したアユがいったん川を下り、体長5センチほどに成長すると再び生まれた川をさかのぼるのだ。
銀色に輝く魚体は美しく、橋の上からでもきらりとひらめいているのが見える。
ご存知の通り、アユはとてもおいしい魚なので、遡上してくる稚アユを狙って様々な魚が集まってくる。
メバルやアイナメ、スズキなどがそうだ。
人間が食べてもうまいので、上の写真みたいな感じで釣られてしまうこともある。
毎年毎年、伝平橋のこの辺りではこうして遡上してきた稚アユを釣りにくる人が多い。
小さなサビキを使って釣る。
これがけっこう面白い。
しかし一応言っとくけれども、これはれっきとした密漁だ。
漁協が放流しているものなので釣るのなら遊漁料を払わなければいけない。
やってる人が密漁と知っているのかどうかは定かでは無いけれど。
かくいう僕も以前にここでやっている人達の様子を見て、興味を持ってやってみたことがあった。
しかしとなりの人の竿にはバシバシ釣れるのに僕のには一向にかかる気配がない。
おかしいなおかしいなと思ってしばらくずっと粘っていたのだけれど、昼過ぎまで粘っても駄目だった。
こういう時はおとなしくどんな仕掛けを使っているのか。どうやって釣るのかを尋ねてみるに限る。
訊いてみるといっぺんに答えが出ることが多いからだ。
今までは釣り場でそういうことがあっても、変に意地になってしまったりして訊けずにいたりしてしまったけれど、僕も大人になっておとなしく人の真似をすると言う術を身につけたわけである。
訊いてみると答えは簡単だった。
僕が使っていたのはアジやサバなどを釣る普通のサビキしかけだったけれど、おじさん達の使っているサビキはワカサギ用のサビキだったのだ。
「フラッシャー付きのがいいよ。こういうやつね」
そういっておじさんは仕掛けを見せてくれた。
僕が使っていたものよりも遥かに繊細な仕掛けだった。
一見簡単そうに見えてもきちんとコツというものがあるのである。
僕はひとっ走り釣具屋まで走り、おじさんが見せてくれた仕掛けと同じものを買った。
お金がないのでひとつだけ。
釣り場に戻って仕掛けを引き出そうと、「ピッ」と型紙から糸を引き出すと「プツっ」と言う音とともに糸が切れてしまった。
ワカサギ用の仕掛けなので糸が細くなっていたのだ。
うろたえながらもそれひとつしか仕掛けがないので、細い糸と糸を必死に結びつけてみる。
30分ほど奮闘してなんとか結ぶことに成功する。
ようやくためしに橋の上から仕掛けをたらし込んでみた。
すると
簡単に1尾が釣れた。
うれしくなって水を入れたバケツにそいつを入れてその後も釣りを続けた。
でも時間が遅くなってしまったからか、釣れたのはそいつ一匹だけで、その後は姿は見えてもちっとも針にかからなくなってしまった。
釣り上げられて一匹だけバケツに残っているアユを僕は放してすごすごと家に帰った。
まあでも釣り方は覚えたわけだし、また次は釣れるさ。
そう思いなおして僕はペダルを踏み込んだ。
あれから3年くらい経つけれど、いまだに稚アユ釣りには行っていない。
soundscape
by itr-y
| 2007-05-01 19:37
| 釣り