2007年 07月 25日
護送列車 |
本来ならもうちょっとスピードを落として通るはずの所を電車はゴウとスピードを上げていった。
あれおかしいなと思いながら、何となく嫌な予感がし始めていた。
いつものホームがビュゴウと目の前を通り過ぎていった。
「あれ.....」
帰り道に渋谷の方に用があったので、今日は電車で出かけたのだ。
新木場で乗り換えやって来た電車に確認もせずに乗り込んだのがいけなかった。
乗り込んだ電車は内房線直通の通勤快速で、京葉線内は終点の蘇我までノンストップの電車だった。
こういうのがたまにあるのである。
以前にも一度間違えて乗ってしまったことがあったけれど、もう何年も前の話だ。
こいつに乗ってしまったときの脱力感と敗北感はちょっと言葉に表しがたいものがある。
三番瀬の彼方に消えてゆく我が街を呆然と見送りながら、この間乗ってしまったのっていつだったっけと考えていた。
そしてふと、同じように今この電車に間違って乗ってしまった人っていったいどのくらいいるのだろうなということを考えはじめていた。
京葉線を使っている人ならだいたい何度かやってしまうミスである。
このなかでいったい何人そういう人がいるだろうと混んだ車内を見回してみた。
やがて電車は最果ての地に着き、実に数年ぶりに僕は蘇我のホームに降りた。
わらわらと人が降りてゆき、房総方面に帰って行く人達はそのまま車内に残った。
ホームの階段を上がって上りのホームの方に行くと、同じように上りのホームに行く人がいた。
それもけっこうな人数。
車内について座ってからも、みんなどことなくきょろきょろと辺りを見回していた。
僕は笑いを静かにこらえながらペットボトルに残った水を飲み、持って来たハードカバーを開いた。
大丈夫。
一人じゃない。
soundscape
by itr-y
| 2007-07-25 06:27
| 日常