2008年 10月 07日
注文の少ない客 |
翌日目が覚めた僕らはトーストとコーヒーとチーズとチョコレートで簡単に朝食をとると、せっかくの休みなんだからとドライブに出かけることにした。
昨夜、放浪写真家Kが言っていた再開発の進む今井の辺りに写真を撮りに行こうぜということになった。
とりあえずエンジンをかけて出発してみたのだけれど、彼の言っている「今井」というのがいったいどこの「今井」のことなのか二人ともよくわからないままに出てしまい、ハンドルを握っていた僕は、僕の考えていた今井水門のあたりをとりあえず目指したのだけれど、そこさえも道を間違えて通り過ぎてしまった。
なんとなく車の流れに乗っていたら環七に乗ってしまいしばらく環七沿いに走る羽目になった。
ゴミゴミしているのであんまり好きな道路ではない。
とっとと右に折れる道を見つけ今度は市川橋から千葉に入った。
しばらく江戸川沿いに走り、国府台を過ぎ、なぜか気がついたら矢切の渡しまで来ていた。
しばらく葱畑のど真ん中に車を停め、土手に登ってしばらくその辺を散歩したりした。
耳に裏に大きな傷のある猫が僕らの前を通って行った。
「フシーッ!」と威嚇するY氏を素早く無視し、彼は畑の脇の納屋の中へと入って行った。
その後僕らはもう少し北上し、今度はまた東京方面に入り、そこから一路浅草方面を目指した。
何となく腹も減り始めていたし、浅草の近辺ならどこかしら食べる所もあるだろうという魂胆だった。
少し迷いながらもなんとか浅草周辺へとたどり着いた。
その辺りでふと僕は以前にラジオで薦めていた店をメモ帳にメモっておいたのを急に思い出した。
レストランの名前とおおざっぱな住所をたよりに僕らは店を探した。
車を降りてからしばらく歩き回り、交番で店を調べてもらった。
目的の店は少し離れた所にあり、そこまで歩いて行くことにした。
なにぶん二人とも腹が減っていたので少しずつ歩調が早くなる。
30分くらいかかってようやく目的の店を見つけることができた。
「香味屋」という、創業ウン十年の由緒正しき洋食屋でビーフシチューとメンチカツが絶品という話を聞いたので、思わずメモに書き残しておいたのである。
きっと昔ながらの庶民派な暖かいお店なんだろうと思って入っていったのだけれど、なんだか考えていたのとお店の雰囲気が違っていた。
なんだか銀座のちょっとマイナーな画廊みたいな雰囲気のお店である。
レジの所でおばちゃんが何やらウェイターのおっさんと話をしており、それ以外には人の姿は見えなかった。
建物を見た瞬間
「ん?」
とは思っていたのだけれど、ようやく歩いて歩いてたどり着いた手前、中に入るのをやめることができなかったというのもある。
想像していたような庶民派「町の洋食屋さん」という感じではなく、どうも有閑マダム昼間の集いという感じなのだ。
僕とY氏は一瞬ひるんだが、せっかく来たのでそのまま案内されてみることにした。
そこで見たのがあのメニューである。
A定食が¥6500
B定食が¥8500
ステーク定食が¥9500
というようなものだった。
メニューを開いた僕らは数秒押し黙り、しばらくメニューをめくり14秒後ぐらいに目を合わせた。
二人の脳裏によぎっていた最優先事項は
「いかに被害を最小限にとどめるか」
ということであった。
僕とY氏は何度も何度もメニューをめくり、なんとか打開策を探した。
そして4桁の数字のうち千の位が1のものを二人ともみつけ、その二つを注文することにした。
しかし4桁の数字のうち百の位は7であった。
四捨五入すると2000である。
基本的に〜定食と名のつくもので¥1000を越えるものを僕は知らないのだけれど、色々と理解できない世界が世の中にはあり、そしてそれに対価を支払う人がいるのだと実感した。
まるでお話の中の二人の猟師のごとく店を這々の体で逃げ出した後、僕らは帰ることにした。
僕はY氏にすまねえと謝ったがその後も二人でずっと笑っていた。
いろんなお店があるものである。
まあそんな休日でしたよ。
soundscape
by itr-y
| 2008-10-07 01:00
| 日常