2010年 03月 20日
風街ろまん |
風の強い日だった。
風が吹いているというのが日本の特徴だということは、僕はドイツに行ってはじめて知った。
海がないと風は生まれにくいのである。そして今日はとてもとても強い風の吹く日だった。あっちこっちで強風を記録していたらしい。都内はあっちこっちで救急車のサイレンが鳴っていた。きっと風のせいだろう。僕はこの風の強い中、小さなビルの屋上でベルリンで買ってきた小さいギターを弾いていた。
都内のビルの屋上に上るということはなかなかあまりないものである。風は強くても、暖かく天気もよかったのでついつい長いこと弾き続けてしまった。洗濯物があちらこちらで干されているのが見えるのだけれど、気がついたら隣のビルの洗濯物がいつの間にかなくなっていることに気がついた。
飛ばされたようだ。
まったく気がつかなかった。
たぶん干した人は取り込みに来て途方に暮れてしまうんだろうなと考えながらも、なおも僕は弾き続けた。そしてギターに飽きると自転車に乗って晴海まで出かけた。特に行く所がなかったのである。連日の就職活動で疲れていたので、自分的完全オフの日にした。
晴海埠頭ではなにかイベントをやっていたらしく、カラフルなアニメのコスプレをした女の子たちがはしゃいでいた。僕はコンビニで買ってきた缶コーヒーを飲みつつ、ベンチでしばらく本を読んでいた。
いろいろと就職活動しているものの、よくよく考えたらきちんと働きたいだなんてことはこれっぽっちも考えていなくて、あくまでも生活の糧だとか社会的な立場として仕事が欲しいなと考えていたくらいだったことに気がついた。どんな仕事もはっきり言って下らなかった。どの仕事も人に何かを押し付ける仕事なのである。僕自身が何かを押し付けられるのがイヤな性質なので、自分的には却下だなと思った。それなら宅配の仕事でもやっている方が遥かに世の中の役に立つ。そう思った。
今までは自分自身が甘ったれだからそんなことを考えるんだと、誰かに言われたようなことを自分に言い聞かせてきたけれど、今では胸を張って言える。甘えとかそんなことではない。そう言うことは間違ったことだ。だから私はやりません、と。そんな考え自体が世間に毒されていたのだということを僕はもう知っている。依存心の強い日本人。何かが起こると必ず誰かを否定し、批判する。自分は変わろうとしない。甘ったれているのはこの国の人間全員だ。誰かのせいにするな。
たぶん読んでいた本のせいだろう。
養老孟司先生と角田光代さんの対談集なんて読むから、どんどんそういう方向に思考が進んでいくのだろう。お二人には悪いがそう言うことにしておこう。
しかしまあでもこの対談集は面白かった。もともとどちらも好きな人なのでこの間、三省堂で見かけてつい買ってしまったのだけれど、やはりおもしろい。相手が角田さんくらいになるとやっぱり養老先生よりは角田さんの方が面白く、あいかわらずの角田さんの自虐ネタも養老センセイのクールな皮肉も痛快だった。これは単純に誰にでもお勧めできる本だと思う。
これまたぼんやり読んでいたらいつの間にか少し寒くなってきたので、パーカーを羽織って帰宅した。夕飯を作らなくては。休みとは言いつつもやることはたくさんあるのである。
soundscape
by itr-y
| 2010-03-20 21:01
| 日常