2010年 04月 27日
狂う人々 |
バケツをひっくりかえしたような朝。
これだけ朝からざんざんと雨が降っていると、みんなイヤな顔を通り越してちょっと楽しそうな顔をしていたりする。
高校生のカップルがじゃれ合いながらひとつのビニール傘を奪い合っている。サラリーマンも交通整理のオバさんも、ポンチョを着て自転車に乗る人も、みんななんだかいい感じにあきらめていた。そんな感じのイベント的な暖かい大雨だった。
家から巣鴨までを歩いていたらその間でスニーカーの中がびしょぬれになってしまった。でもそれほどイヤな感じはしなかった。なかば笑ってしまうようなやけくそ気味の雨。
帰りは雨もやんでいたので歩いて家まで帰った。いつもは自転車で30分くらいをかけてさっと走ってしまう道だが、歩いてみると結構な距離がある。2時間くらいをかけて家まで歩いた。
雨上がりの冷えてクリーンな空気が大好きなので、特に苦にもならなかった。千住の狭い路地を抜け、荒川区の狭い路地を抜ける。この辺りに狭くない道はない。冷えているとはいえ、荷物を背負って歩いていると体が汗ばんできた。ベルリンで買って来た、ただでさえ重い防寒コートも防水性ではないため水を吸ってすごい重さになっていた。これはもう衣類の重さじゃないと思う。
道ゆく人ほぼみんながコートだとかジャケットを羽織っているというのに、自分一人シャツの袖をまくり上げて歩いている。だもんで、周りの人がたまにちらっと見る。ときどき、歩いていると独り言をぶつぶつ言う人や挙動の不審な人を見かける。春が来たなと思う。
ところで春が来ると本当に変な人が増える。
最近そう実感する。
買い物に行くと、独り言を言って、一人なのに誰かと会話をしている人や、辺りをきょろきょろとうかがいながら、松屋の店内で券売機の下をあさる人。そしてやたらと不機嫌で店員に当たり散らす客もいる。
みんな目が危ない。
今日歩いていて出会ったのは、大型犬を散歩させていた人がいて、犬が糞をしたので後片付けをしていたというシーンでのことだった。自分はその光景を何ということもなく横目で見ていたのだけれど、突然前を歩いていた男がその糞の始末をしている光景をみて挙動不審になった。
自分も男も、もうすでに犬と飼い主のいる所から歩いていて離れて行きつつあったのだけれど、男は何度も何度も振り返ってその犬と飼い主の方を見るのである。何度も何度もだ。僕は不審に思ってしばらく見ていたのだけれど、特に何をするということもない。男の頭の中は、「大きな犬が大きな糞をした」というのが一大イベントになっているらしく、まるで小学生のように振り返るのだ。
どこか犬を怖がっているような感じも見て取れたけれど、本当の所はよくわからない。
いったい彼の中で、なにがどういう風に感じられたのだろう。
謎である。
ときどき、自分もああいう風に狂っているのではないかと思うことがある。
昨今の忘れっぽさや独り言の多さ、頭の回転が遅くなってきたことなどを考えると、そういう風に考えてしまうのだ。
何をもって狂うのか、というのは定かではないけれど、おかしい人でもきちんと買い物をしたり、お店に入ったり、手続きをしたりとかはすることができたりするのだ。以前にとあるファーストフード店で見かけた独り言をはなすオバさんは、店員が来ると普通にコーヒーのお替わりを注文していた。社会生活が出来ないわけではないのだ。
一昔前までは、そういった人たちが社会の中で普通に活動していた。現代では少なくなった方だろう。彼らは廃品回収だとか様々な仕事をして生計を立てていた。みんなみんなそれなりに自分達の出来る範囲で仕事を担っていたのである。
今ではそうした人々は、いったいどこに行ってしまったのだろう。
自分もいつかああやって見えない誰かと話し込んだりするんだろうか。
それはそれで楽しそうだななんて思ってしまった。
きっと雨のせいだろ。
soundscape
by itr-y
| 2010-04-27 23:22
| 日常